アラスカ南東部で、アルセク氷河の後退により、かつて氷河に覆われていた山が独立した島となり、新たな地形が誕生しました。NASAの地球観測所が発表した衛星画像により、この自然現象が明らかになりました。この新しい島は約5平方キロメートルの面積を持ち、アルセク湖の水域に囲まれています。
この地形の変化は、アルセク氷河の著しい後退によって引き起こされました。24キロメートルに及ぶこの氷河は、数十年にわたり縮小を続けており、その結果、氷河湖が形成され拡大しています。特に、1984年から2025年にかけて、氷河は約5キロメートル以上後退しました。この後退により、かつて氷河に囲まれていた「プラウ・ノブ」と呼ばれる小さな山が湖に孤立し、新たな島となったのです。NASAの地球観測所のリンジー・ドーアマン氏は、アラスカ南東部の沿岸平野では、氷が急速に水に置き換わっており、氷河の縮小と後退が続いて氷河湖を形成していると説明しています。
プラウ・ノブという名称は、1960年に氷河学者のオースティン・ポスト氏によって、その形状が船の舳先(へさき)に似ていることから名付けられました。ポスト氏とニコルズ大学の環境科学教授マウリ・ペルト氏は、氷河の後退速度から、この山が2020年頃には島になると予測していましたが、実際に島となったのはそれから約5年後でした。ペルト氏によると、1984年にアルセク氷河を見た際、氷河はプラウ・ノブの西約5キロメートルにあるゲートウェイ・ノブまで達していましたが、20世紀半ばにはまだ山を包み込んでいました。しかし、その後の数十年間で氷河はさらに後退し、2025年7月13日から8月6日の間にプラウ・ノブとの接触を完全に失い、島へとその姿を変えたのです。
この新しい島の形成は、気候変動が地域の氷河システムに与える影響を示す具体的な証拠の一つです。アラスカ南東部では、アルセク氷河だけでなく他の氷河も後退しており、それに伴って新たな湖や島が出現する現象が観測されています。アルセク湖自体も、1984年には約45平方キロメートルでしたが、2025年には約75平方キロメートルに拡大しており、近隣の氷河湖と合わせると、この期間に2倍以上に増加しています。このような氷河の後退は、海面上昇、淡水資源の減少、気候変動の加速、生物多様性への影響、自然災害のリスク増加など、地球規模での環境問題とも関連しています。
科学者たちは、この新しい島を変化のペースを追跡するための自然の実験場と捉えています。衛星画像や航空写真、現地調査を通じて、氷の損失がどのように地形を変化させるかを記録することが可能になります。この現象は、地球温暖化が進行する中でアラスカの氷河が急速に変化していることを示す顕著な例と言えるでしょう。