2025年1月、ウガンダのカンパラで開催されたアフリカ連合(AU)の特別首脳会議において、アフリカの農業および食料システムを2035年までに変革するための包括的なロードマップである「カンパラ宣言」が採択されました。この宣言は、従来の農業中心のアプローチから脱却し、生産、貿易、投資、栄養、包摂性、ガバナンスといった多角的なアグリフードシステム全体を重視する戦略的枠組みへと転換するものです。これは、2003年のマプト宣言、2015年のマラボ宣言に続く、アフリカ農業開発プログラム(CAADP)の第三世代にあたる取り組みであり、大陸の持続可能な発展と食料安全保障の実現に向けた強い意志表明と言えます。
カンパラ宣言は、野心的な目標を掲げています。2035年までに、収穫後損失を半減させ、アフリカ域内の農産物貿易を3倍に増加させ、地域で加工される食品の割合を農産物GDPの35%に引き上げることを目指しています。さらに、農業生産性を45%向上させこれらの目標達成のため、大陸全体で1000億ドルの投資を動員する計画です。
この宣言は、アフリカが直面する食料不安、気候変動の影響、人口増加といった喫緊の課題に対応するための包括的なアプローチを提示しています。特に、食料加工業の振興は、単に食料を生産するだけでなく、付加価値を高め、雇用を創出し、地域経済を活性化する上で重要な役割を担います。国内での加工能力を高めることは、この依存を減らし、経済的利益を国内に留めるための鍵となります。食品加工産業は、小規模農家との連携を強化し、サハラ以南のアフリカで食料の最大80%を供給している農村部の所得向上に貢献する可能性を秘めています。例えば、カカオ豆をチョコレートに加工したり、カシューナッツをスナック菓子に加工したりすることで、生の状態での輸出よりも大きな収益が見込めます。
しかし、アフリカ域内の農産物貿易の拡大には、インフラの未整備、高い輸送コスト、複雑な通関手続き、地域経済共同体間の貿易政策の不整合といった課題が依然として存在します。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の進展は、これらの障壁を低減する可能性を秘めていますが、その恩恵が全ての国に行き渡るためには、さらなる努力が必要です。特に、加工食品に対する関税の上昇は、付加価値の創出を妨げる要因となり得ます。
カンパラ宣言は、これらの課題を認識し、持続可能な生産、包摂的な成長、強固なガバナンスを重視しています。専門家は、農業への予算配分の増加、より手頃な価格での農業資材の提供、そして特に子供たちの栄養改善への注力が、ナイジェリアのような国が抱える食料生産の課題を克服するために不可欠であると指摘しています。また、非国家主体による研究、データ収集、政策提言の強化も、宣言の実施において重要な役割を果たすでしょう。この宣言の成功は、加盟国がその戦略的ビジョンを具体的な行動と持続的な資源配分に転換できるかどうかにかかっています。アフリカの農業と食料システムの変革は、大陸の繁栄と食料安全保障の未来を築くための重要な一歩となるでしょう。