2025年9月23日、第80回国連総会がニューヨークの国連本部で開催され、ドナルド・トランプ大統領が演説を行いました。この演説は、国際社会が直面する複雑な課題に対し、従来の外交とは一線を画す力強いメッセージを発信する機会となりました。トランプ大統領は演説の冒頭で、自身の政権下での成果を強調し、アメリカの国際的な地位が向上したと主張しました。しかし、その後の内容は国連のあり方やグローバルな政策に対する厳しい批判へと展開されました。
特に、気候変動対策については「史上最大の詐欺」と断じ、炭素排出削減を目指す政策への反対を表明しました。これは、地球規模の課題に対する国際社会の取り組みに疑問を投げかけるものでした。中東情勢においては、イスラエルとハマスの紛争に言及し、即時的な人質の解放を求めるとともに、パレスチナ国家の承認には反対の立場を示しました。この立場は、ハマスへの報償となるとの見解を示しています。また、ロシアとウクライナの紛争に関しては、ロシアが平和を追求しない場合には「強力な関税」を課す可能性を示唆し、欧州諸国に対してロシア産石油の購入停止を促しました。さらに、欧州諸国における移民問題についても触れ、その管理の甘さが国を「破壊している」と批判しました。
トランプ大統領は、国連がその潜在能力を十分に発揮できていないと指摘し、国連の代わりに自らが紛争終結に尽力したと主張しました。具体的には、就任から8か月で7つの紛争を終結に導いたとし、国連が支援を試みなかった事例を挙げ、その機能不全を批判しました。これは、国連の役割に対する根本的な問いを投げかけるものでした。一方で、演説の締めくくりでは、より安全で豊かな世界を築くための「グローバルな協力」を呼びかけました。この協力の呼びかけは、それまでの厳しい批判との間に、ある種の緊張感を生じさせました。
今回の国連総会では、トランプ大統領の演説以外にも、各国の首脳が様々な課題について議論しました。国連創設80周年という節目にあたり、グテーレス事務総長は多国間協調の重要性を訴え、国連改革への決意を示しました。また、日本の石破首相も登壇し、日本の立場を発信しました。これらの議論は、変化する国際情勢の中で、各国がどのように協力し、課題解決に向けて進むべきかを示唆するものです。特に、トランプ政権の国際政策に対する評価は分かれており、一部の専門家からは、その国家主義的・孤立主義的な姿勢が、従来の外交的規範からの逸脱であるとの指摘もあります。しかし、彼の発言は、多くの国々にとって無視できない影響力を持つものであり、今後の国際関係の行方を占う上で重要な要素となります。