スロバキア全土で、ロベルト・フィツォ首相とその政権の政策、特に親ロシア的な姿勢に対し、数千人規模の市民が街頭で抗議活動を行っています。デモは首都ブラチスラバをはじめ、コシツェなど16都市に及び、経済政策や社会政策に対する不満が表明されています。
抗議活動の主な要因の一つは、フィツォ首相が中国訪問中にロシアのプーチン大統領と会談したことです。これはウクライナ侵攻開始以来、両首脳の3度目の会談となりました。さらに、政府が最近承認した緊縮財政措置も国民の間に緊張感をもたらしています。政府は財政赤字抑制のため必要だと主張していますが、昨年の財政赤字はGDPの5.3%に達し、ユーロ圏で2番目に高い水準でした。欧州委員会は2025年の赤字を6.8%と予測しており、これはEUが定める3%の上限を大幅に超えています。新たな措置には、医療・社会保障の引き上げ、高所得者への所得税増税、一部食品への付加価値税（VAT）引き上げ、祝日の削減などが含まれます。労働組合や批判的な人々は、これらの措置が一般市民に最も大きな負担を強いると指摘する一方、企業側は経済刺激策の不足を訴えています。
野党「プログレッシブ・スロバキア」の党首であるミハル・シメチカ氏は、「スロバキア国民はもううんざりしている」と述べ、同党が他の3つの政治勢力と協力して活動していることを明らかにしました。一部の指導者は、政府に対するゼネストの可能性も示唆しています。これらの抗議活動は、フィツォ首相が北京でプーチン大統領や他の権威主義的な指導者たちと会談したことを受けて、先週も再燃しました。フィツォ首相は、中国の習近平国家主席が第二次世界大戦終結80周年を記念して開催した軍事パレードに参加した唯一のEU首脳でした。
フィツォ首相は、2023年の総選挙で勝利し政権に返り咲いて以来、スロバキアの外交政策の方向性を大きく転換させてきました。特に、ウクライナへの軍事支援停止、EUによる対ロシア制裁への反対、ウクライナのNATO加盟阻止の可能性を示唆する発言、さらにはEUやNATOからの脱退を示唆するような発言は、国内だけでなく国際社会からも懸念の声が上がっています。一部の批評家は、現在のスロバキアがハンガリーのオルバーン首相政権下のハンガリーと同様の道をたどっていると見ています。ハンガリーのオルバーン首相は、スロバキア国内でも高い人気を誇っており、2023年の調査では、スロバキア国民の48%が彼に好意的な見方を示していました。
経済面では、スロバキアの財政状況は依然として厳しい状況にあります。2024年の一般政府赤字はGDP比5.3%に達し、これはEU加盟国の中でもフランス、ポーランド、ルーマニアに次いで4番目に高い水準でした。公的債務も増加傾向にあり、2024年末には対GDP比59.3%に達すると予測されています。このような経済的圧力と、政府の政策に対する国民の不満が、現在の広範な抗議活動の背景にあると考えられます。スロバキア政府は、EUからの資金吸収能力にも課題を抱えており、2021年から2027年のEU予算期間において、割り当てられた128億ユーロのうち、2024年末までにわずか3億8810万ユーロしか活用されていませんでした。