10月2日、フランス全土で労働組合が主導する新たな緊縮財政反対デモが実施されます。これは、政府が最終段階にある2026年度予算案に圧力をかけるための行動です。教育や交通機関など、様々な分野でのストライキが予想されていますが、9月18日に実施された大規模デモほどの混乱は予想されていません。
現在のフランスの財政状況は、ガブリエル・アタル首相率いる政府にとって大きな課題となっています。提案されている2026年度予算案には、約3兆4000億ユーロ（GDP比115.6%）に達する巨額の国家債務に対処するための約400億～440億ユーロの大幅な歳出削減が含まれています。この財政引き締め策に対し、労働組合は、公共サービスや労働者の権利に不均衡な影響を与えると強く批判しています。労働組合は、公共サービスへの予算配分の増加、不安定雇用の撲滅、持続可能な環境への移行への投資、そして再工業化と雇用保護の再強化を求めています。
9月18日のデモでは、数百万人（主催者発表）が参加し、特にパリのメトロ網に大きな影響が出ました。しかし、10月2日のデモでは、パリ・ボーヴェ空港で一部便の減便が見込まれるものの、高速鉄道やパリメトロは通常運行に近い状態が保たれる見込みです。これは、労働組合が財政政策に影響を与えるための、より的を絞ったアプローチを示唆しています。
現在の抗議活動は、政府の財政政策と公共サービスの低下に対する広範な不満の表れです。労働組合は、大富豪や高所得者への課税強化、そして民間企業への公的支援に対する社会的・環境的条件の導入を訴えています。一方で政府は、国家財政赤字に対する投資家の懸念や、国民議会における政治的な分断という難しい状況に直面しています。格付け会社フィッチは、フランスの財政軌道と政治的安定性について懸念を表明し、同国の格付けを「AA-」から「A+」に引き下げました。これは、フランスの債務残高が2027年までにGDP比121%に達すると予測されること、そして政治的不安定性が財政再建を困難にしていることを反映しています。
この予算案を巡る動きは、財政責任と社会的福祉のバランスという、より深い社会的な対話を浮き彫りにしています。労働組合の要求は、教員の専門職の地位向上から医療への十分な資金提供まで、多岐にわたります。政府がこれらの複雑な課題に取り組む中、10月2日のデモは、緊縮財政と公的サービスの維持との間の継続的な緊張関係を示す重要な局面となります。
フランスの国家債務は、2025年末までにGDP比115.9%に達すると予測されており、これは欧州連合（EU）内でもギリシャとイタリアに次いで3番目に高い水準です。 財政赤字もまた、2025年にはGDP比約5.8%に達すると見込まれており、EUの基準である3%を大きく上回っています。 このような財政状況は、フランスの国債利回りに影響を与え、借入コストを増加させる可能性があります。格付け機関の懸念は、フランスの財政赤字が構造的な問題であり、単なる一時的な危機によるものではないという指摘にも表れています。特に、パンデミック時の支出、インフレ対策の補助金、そして減税措置などが財政赤字の拡大に寄与したと分析されています。これらの要因が複合的に作用し、フランスの財政状況は依然として厳しい状況にあります。
しかし、フランス経済は2025年に0.8%の成長が見込まれており、これは政府の当初の予測をわずかに上回るものです。それでもなお、政府債務の利払い費の増加は、国債発行による借入コストの上昇と相まって、予算を圧迫し続けています。このような状況下で、労働組合は、富裕層への課税強化や、民間企業への公的支援に対する社会的・環境的条件の導入を強く求めています。特に、富裕層への課税については、社会正義の観点から重要な論点となっています。一方で、ガブリエル・アタル首相は、富裕税（ISF）の復活や「ズクマン税」の導入には懐疑的な姿勢を示しており、議会での多数派形成が困難な状況で、難しい舵取りを迫られています。 この問題は、フランス国内だけでなく、欧州全体の財政安定性にも影響を与える可能性があり、今後の動向が注目されます。