ニュージーランド政府は、国内のスーパーマーケット市場における競争を促進し、消費者の食料品価格を引き下げるための重要な一歩を踏み出した。2025年11月に議会に提出される新しい法案は、新規スーパーマーケットの開設または拡張の承認プロセスを大幅にスピードアップすることを目的としている。
この動きは、ニュージーランドの食料品市場が主にFoodstuffs NZとオーストラリアのWoolworthsという2つの大手企業によって支配されている現状に対応するものである。これらの既存企業による市場の寡占状態は、新規参入者にとって参入障壁となっており、結果として消費者の選択肢が限られ、価格が高止まりする一因となっている。
ニュージーランドの経済成長大臣であるニコラ・ウィリス氏は、この新しい法案が「新しいスーパーマーケットのためのエクスプレスレーン」を創設すると述べた。これにより、地域的または全国的な競争を改善するスーパーマーケット開発プロジェクトは、迅速な承認プロセス(Fast-Track Approvals Act)の対象となる。現在、新しいスーパーマーケットの資源承認には平均18ヶ月と100万ドルがかかるとされているが、この新しい迅速化システムの下では、承認プロセスが1年未満に短縮される見込みである。
さらに、政府は建築許可プロセスの合理化にも注力しており、全国のスーパーマーケット開発を単一の建築許可当局が担当するように指定する。また、建築法を改正し、スーパーマーケットチェーンが事前に承認された「MultiProof」建築設計をより容易に利用できるようにする。これにより、標準化された設計の建築許可期間は半減し、20営業日から10営業日になる見込みである。
このイニシアチブは、2025年5月にニュージーランド・イニシアチブが発表した「スーパーマーケット参入・拡張迅速化包括法案」の草案作成指示書とも連携している。この法案は、複数の敷地における再区画、承認、および投資クリアランスプロセスをパッケージとして合理化し、数ヶ月以内の決定を目指すものである。
政府は、市場の力を行使して競合他社を排除または圧迫する企業に対して、商取引法を改正して「価格操作」に対抗する措置を強化することも検討している。また、海外投資法についても、新規参入者への投資経路を明確にするための食料品分野に特化した規定を設ける予定である。
これらの改革は、2022年にコストコがオークランドにニュージーランド初の店舗をオープンして以来、同社が国内でのさらなる事業拡大に意欲を示していることとも連動している。ウィリス大臣は、これらの措置がコストコの将来的な拡張計画を支援すると述べている。現在、5つの国内企業も食料品セクターへの参入に関心を示している。
この法案は、ニュージーランドの食料品市場における競争を促進し、消費者に利益をもたらすための重要な一歩と見られている。しかし、一部の環境保護団体や地域団体からは、迅速化プロセスが環境保護や地域社会の利益に与える影響について懸念も表明されており、政府はこれらの懸念にも配慮しながら法案を進める必要がある。最終的な成功は、これらの改革がどのように実施され、競争と地域社会の利益とのバランスがどのように取られるかにかかっている。