2025年8月25日、ポーランドのカロル・ナロツキ大統領は、ウクライナ難民への財政支援を延長する法案を拒否しました。この決定は、ポーランド国内の国民の優先順位とウクライナとの関係について、新たな議論を巻き起こしています。首相ドナルド・トゥスク政権にとって政治的な課題となり、ポーランドの難民政策とウクライナへのコミットメントに疑問符が投げかけられています。
ナロツキ大統領は、ウクライナ難民への支援延長を拒否した理由として、ポーランド国民よりもウクライナ難民が優遇されていると感じていること、特に子供手当や医療提供における格差を指摘しました。大統領は、ウクライナ難民の子供手当はポーランドで働く難民に限定すべきだと主張し、自身の法案として社会保障制度の再編成、医療提供の厳格化、不法入国者への罰則強化などを提案しました。
この決定は、ウクライナの独立記念日の直後に発表され、両国間の関係に緊張をもたらしています。特に、ウクライナの民族主義的な歴史的出来事に対するナロツキ大統領の過去の発言と関連付けられ、一部からは反ウクライナ的な姿勢と見られています。
経済的な側面では、ウクライナ難民はポーランド経済に貢献しているというデータがあります。2024年には、ウクライナ難民がポーランドのGDPに2.7%の純影響を与え、雇用率も向上したと報告されています。難民は納税者、消費者、そして労働者として経済活動に参加しており、ポーランド経済の成長を後押ししています。しかし、ナロツキ大統領の決定は、これらの経済的貢献を考慮せず、国内の世論の変化を反映している可能性があります。最近の調査では、ポーランド国民の過半数が難民への支援は過剰であると考えており、支援の削減を望む声も高まっています。
さらに、この法案拒否は、ウクライナへのStarlinkインターネットサービスの提供にも影響を与える可能性があります。ポーランドは、ロシアの侵攻以来、ウクライナのStarlink利用を財政的に支援してきましたが、今回の決定により、この支援が10月1日以降停止される恐れがあります。これは、ウクライナの軍事作戦や情報伝達に深刻な影響を与える可能性があります。副首相兼デジタル担当大臣のクシシュトフ・ガフコフスキ氏は、この決定を「プーチン軍にとっての贈り物」と批判しています。
ナロツキ大統領の行動は、ポーランド国内の政治的対立を浮き彫りにしています。トゥスク首相率いる政府は、大統領の決定に反対しており、議会で大統領の拒否権を覆すための代替案を探る必要があります。この状況は、ポーランドの国内政治の複雑さと、ウクライナとの関係における今後の課題を示唆しています。