世界的な石油化学産業は、需要を大幅に上回る供給能力の急増により、深刻な景気後退に直面しています。この過剰供給は、主要生産者の利益率を圧迫し、多くの企業が損失を計上する事態を招いています。
特に、米国による関税措置は韓国の石油化学製品の輸出に打撃を与えており、韓国政府はナフサ分解能力の削減を奨励しています。韓国の石油化学業界の主要企業10社は、年間ナフサ分解能力を270万トンから370万トン削減することで合意しました。これは同国の年間総能力の約4分の1に相当します。LG ChemやLotte Chemicalといった企業は、この状況に対応するため、特殊化学品やバッテリー材料へのシフトを進めています。
欧州では、2022年のエネルギー危機に端を発する高エネルギーコストが、プラント閉鎖の引き金となっています。ドイツのDowは、ドイツ国内の3つのプラントと英国の1つのプラントを閉鎖すると発表しました。Ineosのジム・ラトクリフ氏は、欧州の化学産業が米国と比較して著しい不利な立場にあると指摘し、このままでは業界の将来は暗いと述べています。欧州連合(EU)の化学産業は、2025年初頭に需要の低迷とエネルギー価格の高騰に直面し、生産量の低下と競争力の低下を経験しています。
中国もまた、老朽化し損失を抱えるプラントの閉鎖を含む、業界全体の再編を検討しており、これは破壊的な競争を抑制する取り組みの一環です。中国は、老朽化プラントの閉鎖や、AI、ロボット工学、半導体、バイオメディカルデバイス、バッテリー、再生可能エネルギーなどの分野で使用される特殊化学品へのシフトを奨励することで、過剰供給問題に対処しようとしています。この再編は、業界の近代化と効率化を目指すものです。
これらの動きは、世界的な石油化学産業が大きな転換期を迎えていることを示しています。過剰供給、地政学的な緊張、そして貿易政策の変化は、業界の構造を再構築し、新たな競争環境を生み出しています。この状況は、業界の持続可能性と将来の成長軌道に大きな影響を与えるでしょう。