2025年9月12日、米駆逐艦「ラッセル」と英フリゲート艦「リッチモンド」が台湾海峡を通過しました。これに対し、中国人民解放軍（PLA）は、これらの艦艇の動きが「台湾海峡の平和と安定を損なう」と警告を発し、海軍および空軍部隊を展開して監視と警告を行いました。同日、中国初の空母「福建」も台湾海峡で海上公試を実施しました。これは、地域における中国の海軍力増強と、台湾海峡を巡る地政学的な緊張の高まりを浮き彫りにする動きです。
「福建」は2022年6月17日に進水し、2024年5月から海上公試を開始しています。 今回の公試は、同艦が就役前に最終段階の試験を受けていることを示唆しています。特に、電磁カタパルトを備えた同艦は、より大型で先進的な航空機の運用能力を持つとされ、中国の海軍力投射能力の向上を象徴する存在です。 日本の海上自衛隊によると、「福建」は9月11日に尖閣諸島北西海域で確認され、台湾海峡へ向かい、その後南シナ海での訓練と試験に向かったとされています。
米英両艦艇の台湾海峡通過は、国際法と航行の自由の原則に基づくものだと両国は主張しています。英国防省は、王立海軍の活動は「国際法と規範に完全に準拠しており、海洋法に関する国際連合条約に従って航行の自由の権利を行使する」と述べました。 一方、中国側は、これらの行動を「挑発的」とみなし、地域の安定を脅かすものと非難しています。
台湾海峡は、中国と台湾を隔てる戦略的に重要な海域であり、国際的な航行の自由を巡る議論の中心となっています。米国やその同盟国は、この海峡を国際水域とみなし、定期的に艦艇を通過させていますが、中国は台湾を自国の一部と主張し、この海域を自国の領海とみなしています。
今回の出来事は、インド太平洋地域における継続的な戦略的競争と、中国の急速な海軍力増強という文脈の中で理解される必要があります。特に「福建」のような先進的な空母の登場は、地域のパワーバランスに影響を与える可能性があり、今後の動向が注目されます。中国は近年、台湾周辺での軍事活動を強化しており、大規模な軍事演習も実施しています。
国際社会は、すべての当事者に対し、対話を促進し、地域の緊張緩和に努めるよう呼びかけています。この地域の安定は、世界経済にとっても極めて重要であり、台湾海峡の通過は、単なる軍事的な動きに留まらず、国際的な通商路の安全保障にも関わる問題です。