米国財務省は2025年9月10日、イエメンのフーシ派運動に対し、資金調達、密輸、攻撃作戦に関与した個人、団体、船舶を標的とした新たな制裁を発表しました。この措置は、フーシ派によるイスラエルのラモン空港へのドローン攻撃と、それに続くイスラエルによるイエメンへの空爆という、地域緊張の急激な高まりの中で行われました。この状況には、拘束されていたユニセフ(国連児童基金)職員の解放も関連しています。
制裁は、軍事部品の輸送に関与した中国拠点の企業、石油密輸業者、フーシ派関連の海運会社を標的としています。ジョン・K・ハーレー米国財務次官(テロ・金融情報担当)は、「フーシ派は、紅海における米国人員および資産を脅かし続け、同盟国を攻撃し、イラン政権と連携して国際海事安全を損なっている」と述べました。フーシ派は2023年末から紅海で数百回のドローンおよびミサイル攻撃を紅海で実施しており、ガザ地区でのイスラエルとの戦争におけるパレスチナ人への連帯を示すものだと主張しています。
この制裁措置は、9月7日にラモン空港で発生したフーシ派のドローン攻撃を受けて実施されました。この攻撃により2名が負傷し、一時的に空港の運用が停止しました。これに対し、イスラエルは9月10日にイエメンのアル・ジャウフ県とサナア県にあるフーシ派の拠点を標的とした空爆を実施しました。フーシ派当局によると、これらのイスラエルによる攻撃で少なくとも35人が死亡し、130人以上が負傷したと報告されています。空爆は軍事キャンプ、燃料貯蔵施設、フーシ派広報部門を標的としたとイスラエル国防軍(IDF)は発表しました。
一方、9月10日にはヨルダン外務省が、8月下旬にフーシ派に拘束されていたユニセフ副代表であるヨルダン市民、ラナ・シュクリ・カタウ氏が解放され、ヨルダンに帰国したことを発表しました。カタウ氏は、8月31日にフーシ派が首都サナアのオフィスを襲撃した際に拘束された少なくとも19人の国連職員の一人でした。フーシ派は国連職員の拘束理由を明らかにしていませんが、これは反政府勢力支配地域で活動する国連やその他の国際機関、外交官に対するフーシ派による長年にわたる取り締まりの一環です。
この一連の出来事は、中東地域における地政学的な緊張の高まりを浮き彫りにしています。紅海における海上安全保障、ガザ地区での紛争、そして地域および国際的なアクターの関与が、不安定な状況をさらに悪化させる可能性を示唆しています。フーシ派による紅海での船舶攻撃は、2023年末から続いており、世界の海上貿易の約15%が通過するスエズ運河の交通を混乱させています。これにより、多くの船舶がアフリカ南端を迂回する長距離航路を選択せざるを得なくなり、配送時間の遅延やコストの増加を招いています。IMFによると、紅海を通過する貨物量は今年初めに前年比で50%減少しました。この混乱は、世界経済にも影響を与え、サプライチェーンのボトルネックやインフレ圧力の原因となっています。イランのフーシ派への関与については、米国やサウジアラビアはイランが資金や武器を提供していると非難していますが、イランとフーシ派は支援の規模を否定しています。しかし、イランがフーシ派を支援することで、地域における影響力を強化し、サウジアラビアに対抗しているという見方もあります。この複雑な状況は、地域全体の安定にとって引き続き重要な課題となっています。