米国は、2025年11月に予定されていた国連人権理事会の普遍的状況レビュー(UPR)への参加を取りやめることを決定しました。この決定は、人権侵害を犯す国々に対する国連人権理事会の対応の不十分さを理由とするものですが、国際社会における米国の役割と人権へのコミットメントについて、新たな議論を巻き起こしています。
米国は、2025年2月にドナルド・トランプ大統領が発令した、国連人権理事会からの離脱を指示する大統領令に続く形で、今回のUPRへの不参加を表明しました。これは、2018年にトランプ政権が国連人権理事会から既に脱退した経緯を踏襲するものです。米国務省の報道官は、UPRへの参加は、理事会の活動や義務を承認することになり、最も深刻な人権侵害を犯す国々を非難しない理事会の継続的な失敗を無視することになるとの見解を示しました。
UPRは、2006年に国連人権理事会によって設立された制度で、全ての国連加盟国(193カ国)が約4.5年から5年のサイクルで、自国の国籍記録について相互審査を受けることが義務付けられています。米国はこれまで3回のUPRサイクルに参加しており、直近の審査は2020年11月に実施されました。
この米国の決定に対し、アメリカ市民自由連合(ACLU)やPEN Americaといった人権団体からは強い批判が出ています。ACLUは、この動きが米国を最悪の人権侵害国の仲間入りさせ、独裁者や専制君主をさらに大胆にさせる悪い前例となると指摘しています。PEN Americaも、今回の撤退は表現の自由と人権に対する米国の約束からの根本的な後退であると述べています。
今回の米国のUPRからの撤退は、国際的な人権メカニズムの有効性と公平性、そして人権問題に対する多国間主義的な関与における米国の姿勢について、重要な問いを投げかけています。過去の歴史を振り返ると、米国は国際人権法の形成において先駆的な役割を果たしてきましたが、近年では国内政治的考慮が国際的な人権基準への取り組みを上回る傾向も見られます。例えば、米国は女性に対するあらゆる形態の差別撤廃条約(CEDAW)や子どもの権利条約など、多くの主要な国際人権条約を批准していません。このような状況は、国際社会における人権擁護という観点から、米国の立場を複雑なものにしています。
この動きは、米国が国際社会における人権擁護のリーダーシップをどのように位置づけるのか、そして将来的にどのような役割を果たすのかという点において、注目すべき転換点となる可能性があります。人権団体が指摘するように、この決定は、人権侵害国を利する結果を招きかねず、国際的な人権保護の枠組み全体に影響を与える可能性があります。米国が国際的な舞台で人権をどのように推進していくのか、その動向は引き続き注視されるでしょう。