キューバ全土が現在、深刻なエネルギー危機に直面しており、日常の生活、経済活動、そして不可欠なサービスにまで影響を及ぼす、日常的な大規模停電が発生しています。
2025年9月10日午前9時14分、キューバの国家電力システム(SEN)は、アントニオ・グイテラス火力発電所の突発的な故障により、島全体が全面的に停止するという壊滅的な事態に見舞われました。これは2025年に入ってから2度目、昨年後半からは5度目となる全国規模の停電です。多くの地域では1日あたり最大20時間もの停電が続いており、首都ハバナでも4~5時間の停電が発生しています。これにより、スポーツ、労働、教育といった重要な活動が延期される事態となっています。
この危機は、老朽化した火力発電所の問題と、燃料の深刻な不足という複合的な要因によって引き起こされています。これらの問題は、必要な輸入を行うための外貨不足によってさらに悪化しています。発電所のインフラは40年以上経過しているものもあり、十分な投資や修理が行われていないため、頻繁に故障が発生しています。例えば、主要な電力供給源であるアントニオ・グイテラス火力発電所は、9月10日に誤った蒸気信号によって自動停止するという技術的な問題を起こし、電力供給に大きな影響を与えました。
経済的な影響も甚大です。民間企業は事業継続のために発電機に頼らざるを得ませんが、非公式市場での燃料の希少性と高価格が大きな障害となっています。病院や給水ポンプといった必要不可欠なサービスでさえ、稼働に支障をきたしています。観光客はホテルの自家発電設備で対応できる場合もありますが、外部サービスの停止により移動が制限されることもあります。
政府は状況の深刻さを認識しており、マヌエル・マレロ首相は国民に理解を求めていますが、これまでの対策は根本的な解決には至っていません。専門家によると、キューバのエネルギーインフラを近代化するには、今後10年間で約80億ドルから100億ドルの投資が必要とされており、より有利な投資環境を育むための経済改革と開放が不可欠です。また、キューバは再生可能エネルギーの導入にも意欲的で、2030年までに発電量の24%を再生可能エネルギーで賄う目標を掲げていますが、インフラの老朽化がその進展を妨げています。日本もJICAを通じて再生可能エネルギー導入促進の支援を行っており、電力系統の管理・制御の改善が期待されています。しかし、現在の電力不足は、ベネズエラからの燃料輸入の減少や、長引くアメリカの経済制裁の影響も受けており、これらの外部要因も状況を複雑にしています。これらの問題は、国のエネルギー部門における構造的な危機を浮き彫りにし、インフラの不備と経済的課題の両方に対処する包括的な解決策を求めています。