ドイツ連邦議会は2025年8月27日、国防力強化を目的とした志願兵制導入の草案を承認しました。この決定は、ロシアによる安全保障上の懸念が高まる中、ドイツが国防体制を再構築しようとする戦略的な一環です。新制度は志願兵の募集を促進すると同時に、目標兵員数を満たせない場合には徴兵制を復活させる可能性も盛り込んでいます。
ドイツ国防省によると、連邦軍は現在約18万1000人の兵士で構成されており、定数20万3000人を下回っています。この兵員不足を解消するため、ドイツは2026年までに2万人の新兵、2030年までに3万8000人を確保することを目指しています。最終的には2030年代初頭までに連邦軍全体の規模を現在の18万人から26万人に拡大する計画です。この目標達成のため、18歳以上の全ての男性に対し、兵役への適性や意欲に関するオンラインアンケートへの回答が義務付けられます。
この決定は、近年の地政学的な緊張、特にロシアのウクライナ侵攻を受けて、ドイツが安全保障政策を大きく転換させていることを示しています。ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、2011年に徴兵制を停止したことは間違いであったと公に発言しており、現在の状況に対応するためには、より強固な国防体制が必要であるとの認識を示しています。ドイツでは1956年から2011年まで徴兵制が実施されていましたが、冷戦終結後の安全保障環境の変化や国防費削減のため、志願兵制へと移行していました。
今回の草案承認は、ドイツがNATOの義務を果たすための能力強化を目指す動きとも連動しています。国防大臣は、NATOへの貢献を強化するために連邦軍の拡大が必要であると強調しています。また、この動きは、ドイツが欧州の安全保障においてより大きな責任を担おうとする姿勢の表れでもあります。
この志願兵制導入の草案は、ドイツ国内で活発な議論を呼んでいます。一部では、徴兵制の復活は時代の流れに逆行するという意見もありますが、多くの専門家や政治家は、現在の国際情勢を踏まえ、国防力の強化は不可欠であると指摘しています。この新しい制度が、ドイツの国防体制にどのような影響を与えるか、今後の動向が注目されます。