2025年10月3日から4日にかけて行われたチェコ共和国の議会総選挙において、アンドレイ・バビシュ氏率いる右派ポピュリスト政党「ANO2011」が、34.5%の得票率で下院200議席中80議席を獲得し、勝利しました。この結果は、バビシュ氏にとって政治的な復活を意味します。現政権の「SPOLU」連合は52議席を獲得し、第2党となりました。バビシュ氏は、単独での政権樹立は難しいものの、他党との連携を通じて新政権を樹立する意向を示しており、特に極右政党「自由と直接民主主義(SPD)」(7.9%の得票率)や右派ポピュリスト政党「モーターリスト」(6.78%の得票率)との連携が取り沙汰されています。投票率は68.8%でした。
今回の選挙結果は、チェコ共和国の今後の外交政策、特にウクライナへの支援や欧州連合(EU)との関係において、大きな影響を与える可能性があります。アナリストからは、SPDやモーターリストとの連立が、ウクライナへの支援縮小や、ハンガリーやスロバキアのような親ロシア的な姿勢への傾斜につながるのではないかとの懸念が表明されています。バビシュ氏は過去に、ハンガリーのオルバーン首相と親密な関係を築き、EU内の国家主権や移民問題に関して共通の認識を示していました。彼の選挙キャンペーンは、経済成長、減税、エネルギー価格といった国内問題に焦点を当てていましたが、その政権運営が国際社会にどのような影響を与えるかが注目されています。
チェコ共和国は、EUおよびNATOの加盟国として、これまでウクライナへの一貫した支援を表明してきました。チェコ外務省は、ロシアのウクライナ侵攻開始以来、ウクライナの自衛権と領土保全を強く支持し、必要な限りの支援を提供すると明言しています。また、ウクライナのEUおよびNATO加盟も全面的に支持しています。しかし、バビシュ氏率いるANO党が、より欧州懐疑的な姿勢を持つSPDなどと連立を組む場合、こうした外交方針に変化が生じる可能性も否定できません。
2025年10月の総選挙に向けて、
バビシュ氏は9月1日に遊説中に襲撃されるという事件にも見舞われましたが、その後回復し選挙活動を続けました。この事件は、国内の政治的緊張を示唆するものとも受け取られています。今後の焦点は、ペトル・パヴェル大統領とバビシュ氏との会談、そして新政権の樹立プロセスに移ります。バビシュ氏がどのような連立政権を形成し、それがチェコ共和国の国内および国際的な立場にどのような変化をもたらすのか、世界中が固唾を飲んで見守っています。特に、欧州の安全保障環境が大きく揺れ動く中で、チェコ共和国の外交政策の方向性は、地域全体の安定にも影響を与える可能性があります。