ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアとの全面侵攻が終結次第、大統領職を辞任する用意があることを明らかにしました。また、停戦が実現し、安全が確保される状況下であれば、選挙の実施も検討する意向を示しています。これは、2025年9月26日に発表されたアクシオス（Axios）のインタビューに基づくものです。
ゼレンスキー大統領は、「私の目標は戦争を終わらせること、次の任期を得ることではない」と述べ、自身の最優先事項は国家の平和と安定の回復にあることを強調しました。2019年に選出された大統領の任期は本来2024年5月に満了する予定でしたが、ロシアによる侵攻が継続しているため、戦時下では選挙の実施が法的に不可能となっています。ウクライナの憲法および戦時法により、戒厳令下での選挙開催は禁じられています。中央選挙管理委員会によると、戒厳令解除後、選挙準備には9ヶ月から12ヶ月を要するとされています。
大統領は、停戦が成立し、安全な環境が整えば、議会に選挙実施を指示する用意があると述べました。しかし、現状では、ウクライナ全土の約20％がロシアの占領下にあることや、数百万人の国民が国外へ避難している状況などを考慮すると、安全かつ公正な選挙の実施は極めて困難な課題です。2024年末時点で、ウクライナからの難民は約500万人と推定されています。
ゼレンスキー大統領の任期延長は、ロシア側から「非合法な大統領」との批判の的となっていますが、国内での支持率は依然として高い水準を維持しています。9月初旬に行われた調査では、ウクライナ国民の約59％がゼレンスキー大統領を信頼していると回答しました。
この発言は、ウクライナの将来的なリーダーシップと民主的プロセスの再開に向けた重要な一歩を示唆しています。戦争終結を最優先とする大統領の姿勢は、国家の安定と復興への強い意志の表れと言えるでしょう。一方で、選挙実施に向けた具体的な道筋や、安全保障上の課題克服に向けた国際社会の協力が、今後の焦点となります。