中国の科学者チームが、月面の土壌と太陽エネルギーを活用して月面でレンガを製造できる革新的な3Dプリンターを開発した。この技術は、月面基地やインフラ建設のプロセスを大幅に簡素化し、コストを削減する可能性を秘めている。この装置は太陽光を集光し、月面レゴリス(月の砂)を摂氏1300度以上に加熱して溶かし、高密度で耐久性のあるレンガを形成する。製造されたレンガは、放射線や微小隕石から居住モジュールを保護する役割を果たし、地球から重い建材を輸送する必要性をなくす。このシステムは、添加物を一切必要とせず、月面土壌のみを使用する自己完結型であることが大きな利点である。この進歩は、持続可能な月面基地の確立に向けた重要な一歩であり、中国の国際月面研究ステーション(ILRS)設立という野心的な計画とも合致している。
この技術は、約2年間の開発期間を経て完成した。開発チームは、薄膜フィルター、フレネルレンズ、焼結や選択的レーザー溶融などの積層造形技術を駆使した。特に、3000倍以上の集光率を持つ新しいファイバーオプティックバンドルは、過熱や効率性の問題を克服するのに役立った。研究者たちは、月面土壌の組成が地域によって異なるため、複数の模擬土壌サンプルを作成し、装置の適応性を確保した。このレンガは、高い強度と密度を備えており、居住施設だけでなく、設備プラットフォームや道路の舗装にも適している。月面環境は、真空、極端な温度変化、放射線など、地球とは大きく異なる過酷な条件に満ちており、月面での建設には多くの課題が伴う。中国は、2030年までの有人月面着陸を目指しており、このレンガ製造技術は、その実現に向けた基盤技術の一つとして期待されている。さらに、国際月面研究ステーション(ILRS)の建設も計画されており、この技術は月面での持続的な活動を支える上で不可欠なものとなるだろう。