NASAグレン研究センターで開発された革新的な3Dプリント可能な超合金「GRX-810」は、極限の温度と過酷な環境下での航空宇宙部品の性能と耐久性を飛躍的に向上させます。この酸化物分散強化（ODS）合金は、摂氏1,093度（華氏2,000度）を超える温度にも耐えることができ、従来の最先端合金と比較して2倍の強度と1,000倍以上の耐久性という驚異的な機械的特性を示します。GRX-810の開発には、計算モデリングとレーザーベースの3Dプリンティングを組み合わせた革新的なアプローチが用いられ、合金の組成と微細構造を精密に制御することで、その優れた性能特性が実現されました。
2024年5月、NASAはGRX-810をカーペンター・テクノロジー・コーポレーション、エレメンタム3D社、リンデ・アドバンスト・マテリアル・テクノロジーズ社、パウダー・アロイ・コーポレーションの4社にライセンス供与しました。これにより、これらの企業は様々な航空宇宙用途向けにこの超合金を製造・販売できるようになります。この協力関係は、液体ロケットエンジンのインジェクター、燃焼器、タービン、その他の高温部品の製造にGRX-810を統合することを目指しています。GRX-810の検証と商業化の成功は、材料科学における重要な進歩を意味し、より持続可能で効率的な航空宇宙技術への道を開くものです。この新素材は、従来のニッケル基超合金が対応できなかった温度域を橋渡しするものであり、材料科学の新たな地平を切り開くことが期待されています。GRX-810は、2024年のNASA商業発明賞を受賞しており、その革新性が高く評価されています。