英国の研究チームが、CubeSat(キューブサット)望遠鏡向けに、軽量かつ柔軟なアルミニウム製ミラーを3Dプリント技術で開発しました。この革新的なアプローチは、従来の設計と比較して主鏡の質量を約60%削減することを目指しています。
開発されたミラーは、外径84mm、内径32mmの環状(アニュラ型)で、「スプリットP内部ラティス」構造を採用しています。これはハニカム構造に似ており、強度を高めつつ大幅な軽量化を実現します。有限要素解析(FEA)モデリングによる予測では、質量は約56%削減され、目標の60%に迫る結果となりました。
製造プロセスには、AlSi10Mgアルミニウム合金を用いたレーザー粉末床溶融(LPBF)が使用されました。後処理として、気孔率を最小限に抑えるための熱間等方圧接(HIP)と、反射面を作成するための単点ダイヤモンドターニングが施されました。
X線CTスキャンでは、特にレーザー経路が変化する外周部付近に微細な気孔が確認されました。表面粗さ測定では、すべてのサンプルで8nm未満でしたが、HIP処理を施したサンプルはダイヤモンドターニングのみのサンプルよりもわずかに粗さが増加しました。HIPプロセスは内部の気孔を減らし強度を高めましたが、表面粗さの増加に伴い、全光線散乱(Total Integrated Scatter)値も高くなる傾向が見られました。
今後の研究では、表面品質向上のためにクロム光学コーティングの適用が予定されています。また、宇宙環境での性能を評価するための熱的柔軟性試験も実施されます。コスト効率が高く、堅牢で軽量なミラーに対するCubeSat技術の需要が高まる中、この研究は宇宙光学分野における重要な進歩と言えます。
この技術は、宇宙ミッションにおけるペイロードの質量削減に大きく貢献する可能性を秘めています。特に、打ち上げコストの削減や、より多くの機器を搭載するためのスペース確保につながります。従来のミラー製造では、大型化に伴う質量増加が課題でしたが、3Dプリント技術を用いることで、複雑な内部構造を持つ軽量ミラーの製造が可能になりました。これは、宇宙望遠鏡の性能向上だけでなく、小型衛星であるCubeSatの能力を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。例えば、英国宇宙庁(UKSA)が支援するプロジェクトでは、アルミニウム合金(AlSi10Mg)、ニッケルリン(NiP)コーティングされたアルミニウム合金、およびチタン(Ti64)を用いたミラーが開発されており、それぞれ異なる特性と用途が期待されています。これらの進歩は、宇宙探査の新たな可能性を切り拓くものです。