欧州宇宙機関（ESA）の木星氷衛星探査機（JUICE）は、2025年8月31日に木星の氷衛星を調査する長期ミッションにおける重要な節目となる金星フライバイを成功裏に完了しました。このイベントは、木星の衛星に生命が存在する可能性を探るという、宇宙探査における壮大な旅路の一環です。
この成功の裏には、7月16日に発生した一時的な通信異常からの見事な回復がありました。この異常は、約20時間にわたるチームの懸命な努力により解決されました。ESAのオペレーションセンターと製造業者の担当者たちは、「プレッシャーの中での模範的なチームワークだった。チームの冷静で体系的なアプローチのおかげで、ミッションに永続的な影響を与えることなくJUICEを回復させることができた」と述べています。この通信途絶の原因は、16ヶ月ごとにリセットされる内部タイマーが、アンプを制御する機能が使用されているまさにその瞬間にリセットされるという、ソフトウェアタイミングの不具合に起因するものでした。
金星フライバイ自体は、協定世界時（CEST）午前7時28分に最も接近しました。木星の極寒の環境に合わせて設計されたJUICEは、金星近傍の強烈な太陽熱に適応する必要がありました。そのため、熱的制約からリモートセンシング機器は作動せず、主要な高利得アンテナが熱シールドとして使用されました。これは、異なる環境下での宇宙船の適応能力を示す一例です。
2023年4月14日に打ち上げられたJUICEは、木星への8年間の旅を続けています。今回の金星フライバイは、4回の重力アシストマヌーバーのうちの2回目にあたります。以前、2024年8月には地球・月系とのフライバイを成功させており、今後も2026年9月と2029年1月に地球でのフライバイが予定されています。これらの重力アシストは、燃料を節約しつつ宇宙船の軌道と速度を調整するために不可欠であり、2031年7月の木星到着を可能にします。
JUICEの主な科学目標は、地下に液体の海が存在すると考えられているガニメデ、カリスト、エウロパといった木星の氷衛星を詳細に調査し、地球外生命の可能性を探ることです。これらの衛星の環境を比較分析することで、生命誕生の条件についての理解を深めることを目指しています。
金星フライバイの成功は、JUICEミッションが計画通りに進んでいることを示しています。通信異常という困難を乗り越え、宇宙探査における人類の知恵と粘り強さの証として、木星の神秘的な衛星への旅を続けています。