宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、日本標準時2025年10月26日午前9時00分15秒、新型補給機「HTV-X1」を搭載したH3ロケット7号機を種子島宇宙センターから打ち上げ、軌道投入に成功しました。この打ち上げは、日本の宇宙活動における次なる段階への移行を象徴するものです。H3-24W型ロケットは、LE-9エンジン二基と四本の固体ロケットブースターを組み合わせた構成で、その高い推力と燃焼効率が、宇宙へのアクセス基盤を確固たるものにしました。
HTV-X1は、国際宇宙ステーション(ISS)への貢献を担った「こうのとり」(HTV)の後継機として開発されました。満載時の質量は約16トンに達し、貨物搭載能力は先代機比で約1.5倍に増強され、約6.2トンの物資運搬が可能となりました。今回の初飛行でHTV-X1が運ぶ物資は約4.5トンであり、ステーション維持に必要な資材に加え、多岐にわたる実験機器や生活必需品が含まれています。特に、船外の曝露カーゴには、次世代宇宙技術を実証するための多様なペイロードが搭載されています。
HTV-X1のミッションの特異性は、ISSへのドッキング後の役割にあります。補給ミッション完了後、最長6ヶ月間の係留期間を経てISSから離脱した後も、最長1.5年間にわたり軌道上実証プラットフォームとして機能するよう設計されています。この技術実証フェーズでは、超小型衛星放出システム「H-SSOD」によるISSよりも高い高度約500kmからの小型衛星放出や、世界初の試みである地上からのレーザー照射で機体の姿勢を測定する「Mt. FUJI」実験、次世代太陽電池「SDX」の実証が行われる予定です。
打ち上げから約3〜4日の航行を経て、HTV-X1は2025年10月30日にISSへ到着する見込みです。ISS滞在中の油井亀美也宇宙飛行士が、ISSのロボットアームであるカナダアーム2(Canadarm2)を駆使して機体を捕捉し、同日夜には「ハーモニー」モジュールへの結合が完了する予定です。この精密な連携作業は、種子島宇宙センターの運用管制室とつくばの管制室がTDRS衛星を介して通信を確保し、初期運用を成功裏に完了させたことと相まって、計画の緻密さを示しています。
この新型輸送システムの実現は、日本の宇宙輸送能力がコスト競争力を持ち、安定した供給体制を確立するという国家目標達成に向けた重要な一歩です。H3ロケットは、過去の試練を乗り越え、徹底的な原因分析と改善を経て今回の成功を収めました。これは、困難な状況下でも本質的な課題に向き合い、より高い水準へと自らを高めていく重要性を示唆しており、関係者に宇宙開発の未来を切り拓く確固たる自信をもたらすでしょう。
