AtSpaceのA01ロケット、豪州商業ロケットの高度記録を更新する準軌道飛行に成功

オーストラリアの宇宙開発企業AtSpaceが開発したA01ロケットは、2025年11月27日午前9時22分（現地時間）、南オーストラリア州のSouthern Launch社が運営するKoonibba Test Rangeから打ち上げられ、準軌道試験飛行を成功裏に完了させた。この12.2メートル級のロケットは、約4分半の飛行時間で、オーストラリアの商業ロケットによる過去の記録を上回る高度に到達し、目標としていた高度80キロメートルに迫る成果を収めた。このミッションは、AtSpaceが開発を進めるハイブリッド推進システムの技術的成熟度を実証する上で極めて重要な一歩と見なされている。AtSpaceは2021年に設立された企業である。

この成功は、オーストラリアの商業宇宙能力の発展における特筆すべき節目を意味する。AtSpaceの最高執行責任者（COO）であるNick Chang氏は、今回の成功をもって、同社のハイブリッドロケット技術の実現可能性が証明されたと述べた。ハイブリッドロケット技術は、固体燃料と液体酸化剤を組み合わせる方式であり、安全性、高性能、低コスト性、推力制御の機能性といった利点から、次世代の宇宙輸送システムにおける選択肢として注目されている。このA01ミッションは、AtSpaceにとってA01ロケットの初飛行であり、オーストラリアにおけるハイブリッドロケットエンジンの成熟に向けた大きな前進である。

打ち上げプロバイダーであるSouthern Launch社のCEO、Lloyd Damp氏は、このミッションが同社のハイブリッド推進システム開発を加速させたと述べている。Southern Launch社は、2025年にオーストラリア初の商業宇宙帰還を達成しており、国内を世界的な宇宙ハブとして確立することを目指している。同社はKoonibba Test Rangeに加え、Whalers Way Orbital Launch Complexも運営しており、後者は極軌道や太陽同期軌道への高頻度打ち上げが可能な施設の一つである。

この試験飛行は、技術検証に留まらず、地域社会との連携の重要性も示した。Koonibba Test Rangeの運用は、Koonibba Community Aboriginal Corporation（KCAC）とのパートナーシップの下で行われており、KCACのCEOであるCorey McLennan氏は、地域社会の支援を目の当たりにしたことが、特に先住民の人々にとって誇り高く、鼓舞される瞬間であったとコメントした。Southern LaunchとKCACは、地域への雇用機会創出や投資に加え、天文学センターと天文台の共同開発も目指している。

ハイブリッド推進技術の検証は、宇宙産業全体にとって意義深い。例えば、日本の東北大学発ベンチャーであるElevationSpaceなどは、2025年の打ち上げを目指す無人小型衛星への搭載に向け、軌道離脱に必要な高い推力を実現するハイブリッドスラスタの長時間燃焼に成功している。これは、小型衛星における軌道移動やスペースデブリ問題への対応能力向上に寄与する期待が寄せられている。

一方、国際的な宇宙開発の動向として、2025年11月26日に予定されていたSpaceXのFalcon 9 Transporter-15ミッションは、ヴァンデンバーグ宇宙軍基地からの打ち上げが技術的な問題により延期された。このライドシェアミッションは140機の衛星を搭載予定であり、次回の試行日は11月28日金曜日に設定されている。SpaceXの動向とは対照的に、オーストラリアのA01ロケットの成功は、国内の商業ロケット開発の勢いを明確に示している。

AtSpaceとSouthern Launchの協業は、オーストラリア宇宙庁が2018年の設立以来推進してきた、国内宇宙産業の育成という国家戦略と軌を一にしている。A01ロケットの準軌道飛行成功は、ハイブリッドロケット技術の商業的実現可能性を裏付けるものであり、将来的に軌道投入能力を持つ次世代打ち上げシステムの開発に向けた確固たる基盤を築いた。この技術的成果は、オーストラリアがグローバルな宇宙市場において、独自のニッチを確立しつつあることを示唆している。