2025年7月25日、中国・大連港で世界初のグリーンアンモニア燃料供給(バンカリング)作業が成功裏に実施されました。この歴史的な出来事は、再生可能エネルギーを用いて製造されたグリーンアンモニアが、船舶燃料として供給された初めての事例となります。このオペレーションは、ISCCプラス認証およびビューローベリタスによって認証されており、燃焼時に窒素と水のみを排出するこの燃料は、従来の船舶燃料と比較して大幅な排出量削減を実現します。
このグリーンアンモニアは、再生可能電力のみを使用して生産されており、生産から輸送、そして船舶での使用に至るまでのバリューチェーン全体で、真にカーボンニュートラルな船舶燃料としての可能性を示しています。この技術モデルは、世界の海運業界における新たなエネルギー応用への再現可能な道筋を提供します。
この快挙は、中国の海運セクターが国家の「二重炭素」目標達成に向けた重要な一歩を踏み出したことを示しています。中国は、世界最大の造船国であり、主要な港湾を多数有する海運大国として、この分野でのリーダーシップを発揮しています。国際海事機関(IMO)は、2050年までに海運業界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指しており、グリーンアンモニアのような代替燃料の開発と普及は、この目標達成に不可欠です。
しかし、アンモニア燃料の導入には課題も存在します。アンモニアは毒性が高く、腐食性があるため、特別な取り扱いシステムと乗組員の訓練が必要です。また、ディーゼル燃料と比較して燃料効率が低いため、より大きな貯蔵容量が必要となり、航続距離に制限が生じる可能性があります。これらの課題に対処するため、技術開発とインフラ整備が不可欠です。例えば、NOx(窒素酸化物)やN2O(亜酸化窒素)の排出を削減するための技術、燃焼効率を向上させるための共燃技術、廃熱回収戦略などが研究されています。
今回の成功は、グリーンアンモニアが、再生可能エネルギーから船舶燃料まで、ネットゼロ燃料のスケールアップがいかに可能であるかを示す画期的な進歩です。このオペレーションは、中国海運のグリーン化を加速させるだけでなく、持続可能な海運の未来に向けた国際的な協力と経験に貴重な貢献をします。大連港は、バイオ燃料、グリーンメタノール、LNG、そしてグリーンアンモニアを供給できる世界初の港となり、北東アジアのグリーン燃料ハブとしての地位を確固たるものにしました。