ダイムラー・バス社は、旅客輸送の電動化において重要な一歩を踏み出しました。ブリュッセルで開催された「Busworld Europe 2025」において、同社初の量産型バッテリー駆動式都市間バス、メルセデス・ベンツ eIntouroを発表したのです。この発表は、同社の電動化戦略が、従来の都市路線から、都市間および地域路線へと拡大したことを示しています。ダイムラー・バスのCEOであるティル・オーバーヴェルデル氏は、広範な試験が成功裏に完了したことで、電動化戦略における新たな章が開かれ、長距離輸送の課題に対応する準備が整ったと強調しました。
新型eIntouroは、実績のあるディーゼルプラットフォーム「Intouro」をベースとしており、その外観の多くを維持しつつも、最先端の電気駆動システムが搭載されています。モデルは2種類用意されています。標準の12.18メートル仕様と、より長い13.09メートルの「eIntouro M」です。これらのモデルは、50名から最大63名の乗客を収容できます。この車両の中核となるのは中央に配置された電気駆動装置であり、これは定格出力320 kW、ピーク時には400 kWを発揮する強力な性能を提供します。
エネルギーシステムの中核を成すのは、長距離トラックであるメルセデス・ベンツ eActros 600と共通化されたリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーセルです。バッテリー構成は、207 kWhの単一ブロック、または合計414 kWhの二重ブロックから選択可能です。LFP技術の採用により、容量の95パーセント以上を使用することが可能となり、さらに最大15年の耐用年数が期待されています。これらの特性により、理想的な条件下では、最大航続距離は一充電あたり500キロメートルに達します。
eIntouroは、その耐久性を証明するため、極限の気候条件下で広範な試験をクリアしました。北極圏の厳寒から、スペインでの摂氏45度を超える夏の酷暑まで、あらゆる環境でその性能が検証されています。特筆すべき点として、eIntouroは、Omniplus Onポータルを通じて遠隔でソフトウェアを更新できるOTA(Over-the-Air)機能を搭載した初の欧州製バスとなりました。この機能は、車両の運用効率と稼働率を大幅に向上させるものです。
ダイムラー・バスは、2018年に都市型バスeCitaroを導入して以来、電動化ロードマップを一貫して実行してきました。eIntouroの受注開始は2025年春に予定されており、顧客への最初の納入は2026年の後半を目標としています。同社はまた、この10年の終わりまでに、完全電動の観光バス(ツーリングコーチ)を発表する計画も進めており、電動化の波をさらに広げる意向を示しています。