テスラ社は、主力車種であるModel 3とModel Yの改良された基本モデル、通称「スタンダード」仕様を発表するという戦略的な一歩を踏み出しました。この動きは、欧州における顧客基盤の拡大を狙い、電気自動車(EV)への移行に対する価格障壁を引き下げることを目的としています。米国市場では、これらのバージョンは2025年に導入されており、Model 3スタンダードは36,990ドルから、Model Yスタンダードは44,990ドルから販売が開始されました。米国でのこの決定は、連邦補助金が廃止されたことに一部起因しており、テスラが激しい市場競争の中で競争力を維持しようとする強い意志を示しています。
欧州市場向けの生産は、ドイツにあるギガファクトリー・ベルリンにて2025年初頭に開始されました。特に、改良型Model Y(コードネーム:Juniper)の生産は2025年1月にスタートし、Model Yスタンダードの本格的な量産は2025年2月中旬に始まりました。ベルリン工場に注力していることは、同工場が欧州市場専用の車両を生産しているため、この地域に対するテスラの戦略的な重要性を裏付けています。しかしながら、欧州での初期の価格設定は米国とは異なり、ドイツではModel Yスタンダードが44,990ユーロと設定されました。これは、以前の基本バージョンと比較して5,000ユーロ高い価格となっていました。
このスタンダード仕様の投入は、激化する市場の混乱に対するテスラの対応策と見ることができます。2025年5月、テスラの欧州における販売台数は前年比で27.9%という大幅な減少を記録しました。これは、特に中国メーカーがより安価な製品を投入することで市場シェアを積極的に拡大している中での出来事です。しかし、より広範な視点で見ると、2025年最初の5ヶ月間における欧州のEV販売全体の伸びは前年比27%増となっており、個々の企業が課題に直面しているにもかかわらず、持続可能な輸送手段へと消費者の関心が移行していることが示されています。
新しいスタンダード仕様は、機能セットを簡素化することでコスト削減を実現しています。これには、バッテリー容量の縮小や内装トリムの変更などが含まれます。欧州で2025年10月に販売が開始されたModel Yスタンダードの開始価格は約39,990ユーロに設定されました。この価格は、現在「プレミアム・リアホイールドライブ」と名称が変更された以前の基本モデルよりも約10,000ユーロ低い価格帯です。これらの新しい基本モデルの欧州の顧客への納車は、2025年12月から2026年1月にかけて開始される見込みです。