BMW iX3、ノイエ・クラッセ搭載モデルで1,007kmの単独充電走行を達成

2025年11月19日、BMWの全電動iX3、すなわち次世代「ノイエ・クラッセ」プラットフォームを初めて採用したモデルが、単一充電で1,007.7キロメートル（626マイル）という長距離の未支援走行を達成し、電気自動車の航続距離性能における新たな指標を示した。

この実走行テストは、iX3 50 xDriveのバリアントを用いて、6名のBMW従業員からなるチームによって実施された。走行ルートは、ハンガリーのデブレツェン工場を出発し、ドイツのミュンヘンにあるBMW Weltを終着点とする複合的な経路が選ばれた。この経路は、平坦な高速道路を避け、都市部と地方の道路を意図的に組み合わせることで、多様な走行条件下での実用性を検証する目的があった。この偉業は、従来のラボラトリー評価値を大きく上回る現実的なエネルギー効率を実証したものであり、市場投入直前の電動化戦略の成熟度を示すものとして公表された。

極限の効率化を追求するため、チームは戦略的なエネルギー管理を徹底した。具体的には、ウィーン近郊でバッテリー残量が53%に達した時点で、空調設備、暖房、車載ラジオの機能を停止させた。急加速を避け、滑らかな運転操作を維持した結果、ミュンヘン到着時にも20キロメートル（12マイル）以上の航続可能距離が残存した。このiX3 50 xDriveは、345 kW（469馬力）のシステム出力を誇るモデルである。

この成果の基盤となるのは、BMWの次世代EV専用アーキテクチャ「ノイエ・クラッセ」プラットフォームである。このプラットフォームは第6世代のBMW eDriveテクノロジーを統合し、円筒形のバッテリーセルと800ボルトのシステム電圧を特徴とする。BMWの発表によれば、この新技術は従来世代比でエネルギー密度が20%向上し、充電速度が30%高速化、航続距離が少なくとも30%増加するとされている。このiX3 50 xDriveは108.7 kWhのネット容量を持つバッテリーを搭載している。

デブレツェン工場は、2025年後半にノイエ・クラッセベースの最初のモデルであるiX3の量産を開始した。この工場は、BMWグループにとって初めて、通常稼働において完全に化石燃料を使用しないことを目指して設計されたiFACTORY原則に基づく施設である。欧州市場への本格投入は2026年3月に予定されており、WLTP基準で最大805kmの航続距離を公称している。また、800Vの急速充電システムにより、わずか10分で約372キロメートル分のエネルギー充填が可能である。

この1,007.7 kmの走行記録は、極限の条件下での達成ではあるものの、BMWが次世代EV技術により、実用的な長距離移動の懸念を払拭し、電動化の新たな標準を確立しようとする意図を明確に示している。この技術的飛躍は、今後の自動車産業におけるエネルギー効率競争における同社の位置づけを強化する布石と見なされる。