2025年9月5日から8日まで、中国の重慶市で開催されていますワールド・スマート・インダストリー・エキスポ2025は、人工知能(AI)とインテリジェントコネクテッド新エネルギー車(NEV)を中心に、スマート産業における3,000以上のイノベーションが集結する場となっています。この博覧会は、AIが産業と生活をどのように変革しているかを示すもので、国内外から600社以上の企業が参加し、130,000平方メートルの屋内展示スペースと40,000平方メートルの屋外スペースを埋め尽くしています。
中国の習近平国家主席は祝賀の書簡で、AI技術の急速な進化が人間の生産活動とライフスタイルを深く変革し、世界の産業構造を再構築していると指摘しています。中国はAIの開発とガバナンスを重視し、AI技術革新と産業革新の深い統合を積極的に推進することで、質の高い経済・社会発展を支援し、人々の生活向上に貢献する姿勢を強調しています。AIは人類に有益な国際的公共財であるべきであり、中国は各国との広範な国際協力を通じて、この分野での健全かつ活発な発展を目指すとしています。
博覧会では、自動運転、スマートホーム、低高度経済(ローアビエーションエコノミー)といった分野のイノベーションが紹介されています。特に、「AI+」と「インテリジェントコネクテッド新エネルギー車」に焦点が当てられ、AIが産業の効率化、意思決定の高度化、そして持続可能なソリューションの提供に不可欠な要素であることが示されています。例えば、製造業においては、AIは生産ラインの最適化、予知保全、品質管理の向上に貢献し、スマートファクトリーの実現を加速させています。これは、リアルタイムデータ分析と自動化を通じて、生産プロセス全体の効率を劇的に向上させる可能性を秘めています。
シンガポールが名誉ゲスト国として参加していることは、中国・シンガポール(重慶)戦略的コネクティビティ実証イニシアチブ(CCI)の10周年を記念するものでもあります。この協力関係は、デジタル貿易やスマートシティ分野における国際協力の重要性を示唆しています。シンガポールからは、香港科技大学の理事長であるハロルド・シュン氏が「具現化された知能」の台頭と、ロボットが現実世界で学習、適応、協働する未来を予測しています。また、シーメンスAGのデジタル産業部門CEOであるセドリック・ナイケ氏は、AIがソフトウェア定義型オートメーションへの移行を加速させ、産業の柔軟性、効率性、持続可能性を高めると述べています。
経済的な側面では、インテリジェントコネクテッド新エネルギー車、電子情報製造、先端材料分野で1137億元(約2兆円)に達する契約が締結され、これは総契約額の50%以上を占めています。これは、これらの先進技術分野が持つ巨大な経済的ポテンシャルと市場の活況ぶりを裏付けています。
さらに、博覧会で注目されている「低高度経済」は、中国における戦略的新興産業として急速に発展しており、ドローン配送や空飛ぶタクシーなどの応用が期待されています。中国政府はこの分野の成長を強く後押ししており、2035年までに市場規模が3.5兆元(約70兆円)に達すると予測されています。この分野の発展は、物流、交通、さらには都市管理のあり方を根本的に変える可能性を秘めています。
ワールド・スマート・インダストリー・エキスポ2025は、AIとインテリジェント技術がもたらす産業の変革と、それらが社会全体の発展にどのように貢献していくかを示す、未来への展望が開かれるイベントとなっています。これらのイノベーションは、より効率的で、より持続可能で、そしてより豊かな未来を築くための基盤となるでしょう。