米国俳優組合SAG-AFTRAは、2025年10月、急速に拡大するマイクロドラマ分野に特化した新たな労使協定「バーティカルズ協定」を導入しました。この協定は、TikTokやYouTube Shortsといったモバイルプラットフォーム向けに最適化された、1話あたり5分未満の短編連続ドラマを対象としています。この動きは、ハリウッドが縦型コンテンツの重要性を認識し始めた明確な証左です。
この新たな協定は、製作費30万ドル未満の作品に関わる制作者とパフォーマー双方に、必要な保護と柔軟性を提供することを目指しています。SAG-AFTRAのショーン・アスティン会長は、デジタル環境の変化の波に乗る俳優たちを支援する決意を強調しました。この協定は、制作の現実であるスピード、予算、創造的な意欲に適合しつつ、組合の中核的な俳優保護基準を堅持するものです。これにより、組合員に新たな仕事の機会をもたらすフロンティアが開拓されます。
マイクロドラマ分野は目覚ましい成長を遂げており、ある調査によれば、そのグローバル売上高は2025年までに110億ドルに達する見込みであり、これは無料広告型ストリーミングテレビ（FAST）チャンネルの収益の約2倍に相当するとされています。また、中国市場ではすでにマイクロドラマの売上高が映画興行収入を上回る勢いを見せており、2024年には50億ドルを超えたとの報告もあります。この縦型コンテンツ分野は、2030年までに数十億ドル規模の市場になると予測されており、Fox Entertainmentをはじめとする主要企業も専門企業への投資を積極的に進めています。
マイクロドラマは、その迅速な制作サイクルゆえに、新進気鋭の才能にとって新たな活躍の場を提供しますが、一方で、制作品質の低下や非組合員労働者への依存といった懸念も残っています。しかし、この協定の締結は、視聴者のコンテンツ消費習慣におけるこの大きな転換点に対し、業界が正式に適応し始めたことを示唆しています。この協定は、俳優たちが進化するデジタル領域で活動する上での基盤を固め、変化を新たな表現の機会として捉え、自己の価値を確立していくための道筋を示すものと言えます。