メアリー・トゥザニ監督の新作映画「カレ・マラガ」が、2026年のアカデミー国際長編映画賞部門でモロッコ代表として出品されることが決定しました。選考委員会は、本作のテーマ性、芸術性、配給の可能性を高く評価し、満場一致で選出しました。
本作は、タンジェに一人で暮らす79歳のスペイン人女性、マリア・アンヘレスの物語です。長年住み慣れた自宅を売却しようと娘が訪れたことで、彼女の人生は一変し、住まいと記憶を守るための闘いが始まります。「カレ・マラガ」は、第82回ヴェネツィア国際映画祭のヴェネツィア・スポットライト部門でワールドプレミア上映され、観客賞を受賞しました。その後、トロント国際映画祭でも上映され、2026年3月には世界各国で劇場公開が予定されています。これは、トゥザニ監督の前作「ブルー・カフタン」がアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたことに続く、重要な一歩となります。
本作はスペイン語での長編監督デビュー作であり、タンジェという都市の文化的な背景も丁寧に描かれています。タンジェはスペインに近く、その地理的条件から古くから文化の交差点となってきました。1930年代には、フランコ独裁政権を逃れて多くのスペイン人が移住し、そのコミュニティの末裔が物語の中心となります。
主演のカルメン・マウラは、スペイン映画界のレジェンドであり、ペドロ・アルモドバル監督作品の常連としても知られています。彼女は、自身のルーツと人生の後半における欲望を再発見していく女性を、温かくも力強い演技で表現しています。
「カレ・マラガ」は、場所への深い帰属意識や、高齢期における愛と欲望を追求する権利といったテーマを扱っています。家族間の対立や、世代間の価値観の違いも描かれており、観客に深い共感を呼び起こす作品となっています。トゥザニ監督は、本作でタンジェという自身の故郷への個人的な賛辞を送ると同時に、カルメン・マウラの素晴らしい演技を引き出しています。この作品は、人生の後半においても情熱や夢、尊厳を諦める必要はないという、感動的なメッセージを伝えています。