第50回トロント国際映画祭(TIFF)で、クロエ・ジャオ監督の最新作「ハムネット」が観客賞を受賞しました。これはジャオ監督にとって、2020年の「ノマドランド」に続く同賞2度目の受賞となります。「ハムネット」は、ジェシー・バックリーとポール・メスカルが主演を務め、ウィリアム・シェイクスピアの息子を亡くした家族の深い悲しみと、それが夫婦の関係に与える影響を描いています。
ジャオ監督は受賞スピーチで、自身の孤独な経験と、物語が持つ人々を結びつける力について語りました。「ハムネット」は、2025年11月27日にアメリカで限定公開され、その後12月12日に全世界で公開される予定です。TIFFの観客賞はアカデミー賞の行方を占う賞としても知られ、過去15回の受賞作品のうち13作品が作品賞にノミネートされるなど、オスカー候補として有力視されています。特に2008年以降では、観客賞を受賞した作品が作品賞にノミネートされなかったのは一度だけという実績があります。このことから、「ハムネット」が今後の賞レースで注目されることは間違いありません。
本作は、シェイクスピアの家庭生活と、彼の最も有名な戯曲の一つである「ハムレット」の誕生を結びつける繊細な探求となっています。ジャオ監督は、偉大な劇作家が11歳の息子を亡くした悲しみの中で「ハムレット」を執筆したことを示唆し、作品への理解を深めようとしています。主演のポール・メスカルとジェシー・バックリーは、深い感情の生々しさを表現しており、特にバックリーの演技は、母親としての喜びと喪失の痛みを繊細に描き出し、批評家から絶賛されています。彼女の演技は観る者の心に深く響くものがあるでしょう。
「ハムネット」はテルライド映画祭で初公開されて以来、批評家や観客から絶賛されており、賞レースでの大きな注目を集めています。ギレルモ・デル・トロ監督の「フランケンシュタイン」が次点、ライアン・ジョンソン監督の「ナイブズ・アウト:グラス・オニオン」が3位に入賞しました。これらの作品も高い評価を受けています。
ジャオ監督は「ノマドランド」でアカデミー賞作品賞と監督賞を受賞しており、今回「ハムネット」で再びTIFF観客賞を受賞したことで、彼女の今後の活躍にも期待が寄せられています。この作品は単なる悲劇を描くだけでなく、芸術が人生の困難な経験を乗り越えるための力となることを示唆しています。観客は、この感動的な物語を通じて、愛、喪失、そして創造の力を再認識することになるでしょう。