ウルグアイの俳優兼監督ダニエル・ヘンドラーが監督・主演を務める最新作『27ナイツ』が、2025年9月19日に開幕する第73回サン・セバスティアン国際映画祭のコンペティション部門でワールドプレミア上映されることが決定しました。
本作は、83歳のマーサ・ホフマン（マリルー・マリーニ）が、娘たちによって精神科クリニックに強制的に入院させられるという、高齢者の精神的健康と複雑な家族関係に深く切り込む物語です。ヘンドラー自身も、マーサの状態を評価する専門家であるカサレス役で出演し、物語に深みを与えています。原作は、作家であり心理分析家でもあるナタリア・ジトが2021年に発表した小説で、2003年にアルゼンチンで実際に起こった、女性が家族の意思に反して精神科施設に収容された事件に着想を得ています。
マーサ・ホフマンは、かつてダンサーであり、現在は芸術のパトロンとして若い芸術家たちを支援する裕福な未亡人です。彼女の気前の良さや、遺産を浪費する可能性を懸念した娘たちは、彼女の精神的な安定を疑い、強制的な入院を画策します。この映画は、高齢期における自己決定権や、家族間の期待と現実の間の緊張関係といった、現代社会が直面する普遍的な問いを投げかけます。
ヘンドラー監督は、本作『27ナイツ』に加え、同映画祭の「オライゾン・ラティーノス」部門で『Un cabo suelto』も上映される予定であり、今年の映画祭における彼の存在感の大きさを物語っています。サン・セバスティアン国際映画祭は、世界的に権威ある映画祭の一つであり、多くの注目作品が集まる場です。今年のコンペティション部門には、エドワード・ベルガー監督の『Ballad of a Small Player』やクレール・ドゥニ監督の『Le Cri des Gardes』など、国際的な評価の高い監督たちの作品も名を連ねています。
批評家からは、マリルー・マリーニ演じるマーサの、年齢や社会的な期待に抗い、自身の人生を最後まで自分らしく生きようとする姿が称賛されています。本作は「優しくも鋭い師弟バディストーリー」や「心温まるドラマコメディ」と評されており、高齢者の尊厳や自由、そして芸術との関わりを繊細に描き出している点が注目されています。この作品は、単なる家族間の葛藤を描くだけでなく、人生の後半期をどのように生きるべきか、誰がそれを決定するのかという、より深い人間的な探求を促します。
『27ナイツ』は、サン・セバスティアンでのワールドプレミアの後、10月17日にはNetflixで世界同時配信される予定です。この作品は、人生の節目における家族の絆や個人の尊厳について、静かに、しかし力強く問いかける機会を提供します。