フランソワ・オゾン監督がアルベール・カミュの小説「異邦人」を映画化した作品が、2025年8月27日から9月6日まで開催される第82回ヴェネツィア国際映画祭で世界初上映されることが決定しました。主人公のムルソー役はベンジャミン・ヴォワザンが務め、レベッカ・マルデルやドゥニ・ラヴァンらが脇を固めます。
ヴェネツィア国際映画祭は、アカデミー賞候補となる作品の重要な登竜門として知られており、今年のコンペティション部門にはヨルゴス・ランティモス監督やギレルモ・デル・トロ監督といった著名な監督たちの作品も出品されます。オゾン監督の製作会社FOZが製作を手がけ、複数の企業が共同製作に名を連ねる本作は、10月29日にフランスで劇場公開される予定です。映画祭での評価は、その後の賞レースにおける重要な指標となるでしょう。
カミュの「異邦人」は1942年に発表され、実存主義の金字塔として、また世界で最も読まれているフランス文学の一つとして広く認識されています。感情に乏しく周囲に無関心な主人公ムルソーが、アルジェリアで偶然殺人事件を起こし、裁判ではその感情の欠如が焦点となる物語です。オゾン監督は本作をモノクロームで撮影し、カミュの哲学的なテーマを現代的な視点から再解釈しようと試みています。
ベンジャミン・ヴォワザンはオゾン監督の前作「Summer of 85」でも主演を務めており、今回が2度目のタッグとなります。レベッカ・マルデルはムルソーの恋人マリー役で、オゾン監督とは「The Crime Is Mine」以来の再共演です。その他、スワン・アルロー、ピエール・ロタン、ドゥニ・ラヴァンといった実力派キャストが名を連ねています。撮影は今年4月にモロッコで行われました。
ヴェネツィア国際映画祭は世界中の映画製作者にとって重要な発表の場であり、本作がどのような評価を受けるのか、世界中の映画ファンが注目しています。特に、カミュの原作が持つ「不条理」や「疎外感」といったテーマが、オゾン監督の手によってどのように映像化されるのか、期待が高まります。