ストロム教授、意識が時間・空間・物質に先行する新理論を提唱、AIP Advancesに掲載

ウプサラ大学の材料科学者であるマリア・ストロム教授は、2025年に科学誌AIP Advancesに論文を発表し、現実の根源に関する新たな理論的枠組みを提示した。この理論の核心は、意識が脳活動の副産物ではなく、物質、空間、時間を含む全ての経験の基盤となる根源的な場であるという主張である。ストロム教授の論文は、当該号で最優秀論文として認定され、表紙を飾るという評価を受けた。

ナノテクノロジーを専門とするストロム教授は、ウプサラ大学の材料科学・工学部のナノテクノロジー・機能性材料（NFM）研究グループに所属している。彼女は1997年にウプサラ大学で固体物理学の博士号を取得し、2004年には同大学でナノテクノロジーの教授に就任した経歴を持つ。今回の理論的貢献は、アインシュタイン、シュレーディンガー、ハイゼンベルク、プランクといった過去の著名な物理学者が開拓した思想的基盤の上に構築されている。

この枠組みは、意識を根本的な場として捉え、それが時間と空間の出現を導くと示唆しており、量子物理学と非二元論哲学を結びつける試みである。この理論的提言は、意識が時間、空間、物質よりも先に存在したという、根源的な実在の性質に関する問いを提起する。ストロム教授のモデルでは、意識は普遍的な認識能力として機能し、無限の可能性を秘めた「心」と物理的実在との橋渡し役を担う基盤として位置づけられる。

この理論の強みは、多岐にわたる科学分野で検証可能な予測を含んでいる点にあり、量子場理論と非二元論哲学の洞察を統合している。具体的には、付録資料には、3つの原理（3Ps）に基づいた社会的・心理学的プログラムや、対称性の破れ以外の崩壊メカニズムによる個々の意識の出現に関する考察、検証可能な予測が含まれている。AIP Advancesは応用、理論、実験を含む物理科学の全分野を扱うオープンアクセス誌であり、ストロム教授の論文は2025年11月13日にオンライン公開された（論文番号：AIP Advances 15, 115319 (2025)）。

この理論は、意識が単なる神経プロセスの結果ではなく、実在の基礎的側面であると提案することで、神経科学における還元主義的ではない代替案を提供し、構造と経験の起源に関する学際的な探求に新たな方向性を示唆している。この試みは、物理学と哲学の最も深遠な課題の一つに、数学的枠組みをもって挑むものである。