古典重力による量子もつれの生成、ロイヤル・ホロウェイの研究が示唆

ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校の物理学者二名が、量子重力を仮定することなく、古典的な重力場が物質間に量子もつれを引き起こし得ることを理論的に実証した。この研究は、重力と量子力学の関係性に関する従来の前提に異議を唱えるものである。この成果は、2025年10月22日に学術誌『Nature』で発表された。

本研究を主導したリチャード・ハウル博士と大学院生ジョセフ・アジズ氏は、古典重力場と物質の量子場との相互作用が、量子重力を必要としない「準もつれ」と呼ばれる弱い形態の量子もつれを生成し得ると論じた。従来、重力相互作用がもつれを引き起こすには、重力場自体が量子力学的でなければならないという見解が一般的であったが、ハウル博士らの議論はこの見解を覆すものである。アジズ氏とハウル氏の研究は、古典重力理論が、仮想粒子を介した物理的かつ局所的なプロセスを通じて量子情報を伝達し、もつれを生成できることを示唆している。

この理論的枠組みは、1957年にリチャード・ファインマンが提唱した思考実験に深く根ざしている。ファインマンは、量子重ね合わせ状態にある物体が別の物体と重力的に相互作用した場合、それが量子重力の存在を証明するだろうと示唆した。現代的な解釈では、この相互作用の結果生じるもつれが、重力が量子力学に従うことの明確な証拠と見なされてきた。古典物理学において重力は時空の曲率として理解されるのに対し、量子物理学では基本的な力は離散的な量子によって媒介されると仮定される。

この古典重力によるもつれ効果は、量子重力理論が予測するものとは異なるスケールで現れるため、実験パラメータに関する重要な情報を提供する。ハウル博士は、観測される効果が強い規模であれば量子重力の存在を示唆するが、相関が弱い場合は古典重力によって説明できる可能性があると指摘した。この理論を検証するための実験的試みは、環境の摂動によるデコヒーレンスを防ぐ必要性から、依然として困難な課題に直面している。

この分野では、ウィーン大学のマルクス・アスペルムヤー教授やユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのサウガト・ボース教授など、重力場が量子的に振る舞うかを検証する実験に取り組むグループが存在する。本研究は、量子重力の発見を待たずに、もつれを観測する代替経路を提示する理論的進展である。一方で、オックスフォード大学のキアラ・マルレット氏のような研究者は、古典重力理論が局所的な手段で直接もつれを媒介することはできないと反論しており、この新たな知見は活発な議論を呼んでいる。