原子核の形状に関する70年ぶりの定説を覆す三軸非対称構造を理論的に解明

編集者: gaya ❤️ one

理化学研究所(理研)仁科加速器科学研究センターの理論研究グループは、重い原子核の基本的な構造に関する長年の定説を覆す知見を発表した。これまで、球形から大きく変形した原子核は、ラグビーボールのように一つの軸に沿って細長い「軸対称変形」をしていると想定されてきた。しかし、今回の研究により、多くの重い楕円体変形原子核が、三つの主軸の長さがすべて異なる「三軸非対称」の、アーモンドのような形状を持つことが理論的に示された。この発見は、1950年代にAage BohrとBen Mottelsonによって確立された核構造の伝統的なモデルに直接的に挑戦するものである。

キャプション: 原子の図では、核を中性子と陽子からなる円形の塊として描くことが多いです

この理論的転換の端緒を開いたのは、理研の大塚孝治客員主管研究員(東京大学名誉教授)であり、彼は楕円体の断面が円形ではない、アーモンド状の形状がより自然ではないかと提唱した。当初、この仮説は多くの核物理学者から異論に直面したが、大塚氏と共同研究者らは、スーパーコンピュータ「富岳」の計算能力を駆使した複雑な量子論的計算により、その理論的裏付けを固めた。このシミュレーション結果は、既存の実験データ、例えばエネルギー準位や四重極モーメントなどと見事に一致し、アーモンド型形状の妥当性を裏付けた。

この三軸非対称形状の解明は、原子核の回転に関する理解に重大な影響を及ぼす。軸対称な場合、原子核は一つの軸を中心に回転すると考えられていたが、三軸非対称であれば、原子核は二つの軸に沿って回転する可能性を示唆する。これは、核構造のダイナミクス、特に集団運動の記述において、従来の枠組みを大きく超えることを意味する。また、この新しい描像は、質量数が100を大きく超えるような重い原子核の構造解明、さらには安定または準安定な超重元素の探索研究においても、結合エネルギーの観点から重要な指針となると期待される。

本研究成果は、筑波大学計算科学研究センターの清水則孝准教授や東京大学の角田佑介特任研究員らが参画した国際共同研究の成果として、学術雑誌『European Physical Journal A』に2025年6月2日付で掲載された。この理論的枠組みは、原子核の変形パラメーターに依存して質量パラメーターが変化するような複雑な集団運動の記述を、より微視的な核子間の有効相互作用から導出するという、核構造力学の基礎的課題の発展にも寄与すると見られている。この新たな理論的基盤は、今後、不安定核における集団励起モードや、超重元素の安定性に関する予測の精度向上に不可欠な要素となるだろう。

ソース元

  • Mirage News

  • RIKEN and Kyoto University discover new method for controlling superconducting states through 'twisting'

  • Unveiling a novel triaxiality-driven collective feature in atomic nuclei via the two-body random ensemble

  • Preponderance of triaxial shapes in atomic nuclei predicted by the proxy-SU(3) symmetry

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