MIT、マジックアングル積層三層グラフェンで非従来型超伝導のV字型ギャップを直接観測
編集者: Vera Mo
マサチューセッツ工科大学(MIT)の物理学者チームは、マジックアングル積層三層グラフェン(MATTG)において、非従来型超伝導の明確な兆候である特徴的なV字型の超伝導ギャップを直接観測したと発表した。この発見は、抵抗なく電流を流す超伝導現象の根底にあるメカニズムの理解を深める上で重要であり、室温超伝導体の実現に向けた設計指針を提供する可能性がある。
超伝導体はMRIスキャナーや粒子加速器に不可欠だが、従来のものは極低温でのみ機能するという制約がある。今回の研究の核心は、MATTGが示すV字型のプロファイルが、従来の超伝導体に見られる均一な形状とは異なり、電子対形成のメカニズムが根本的に異なっていることを示唆した点にある。この成果は、2025年に学術誌『Science』に掲載された論文に詳述されている。
研究チームは、電子トンネル効果と電気伝導測定を組み合わせた新しい実験プラットフォームを開発し、このV字型のギャップが電気抵抗ゼロの超伝導状態でのみ出現することを直接的に確認した。この手法は、2次元材料における超伝導ギャップの形成をリアルタイムで観察することを可能にした方法論的な進展である。このV字型の観測は、格子振動ではなく、電子間の強い相互作用が超伝導を引き起こしている可能性を示唆している。
本研究を主導したのは、MIT大学院生のSun Shuwen氏と博士号取得者のPark Jeong Min氏であり、彼らは新しい測定装置を共同開発した。また、日本の物質・材料研究機構(NIMS)のWatanabe Kenji氏とTaniguchi Takashi氏も共同著者として参加した。Taniguchi氏とWatanabe氏のグループは、グラフェン研究において高純度の六方晶窒化ホウ素(hBN)結晶を提供し、マジックアングル超伝導などの異種効果の発見を可能にしてきた実績がある。
MATTGは、三層のグラフェンシートを特定の角度で積層することで生成される特殊構造体であり、この微細なねじれが量子効果を発現させる。以前の研究でMATTGが非従来型超伝導の兆候を示す可能性は示唆されていたが、今回の結果はそれを最も直接的に裏付けるものとなった。Park氏は、従来の超伝導体と異なり、MATTGでは電子同士が互いにペア形成を助け合う、より強固な結合メカニズムが働いていると推測している。
この発見は基礎科学的な意義に加え、実用的な応用への道筋を開く。超伝導メカニズムの深い理解は、エネルギー損失のない送電網や、より実用的な量子コンピューティングシステムの開発に不可欠である。MITのPablo Jarillo-Herrero教授は、一つの非従来型超伝導体の理解が分野全体の理解を促進し、究極目標である室温超伝導体の設計を導く可能性があると指摘している。また、MATTGが最大10テスラの高磁場下でも超伝導性を示すことから、「スピン三重項」超伝導体である可能性も示唆されており、より強力なMRI技術への応用も期待される。本研究は、ねじれ角によって電子相を制御する「ツイストロニクス」分野を新たな方向へと推進するものである。
ソース元
Technology Org
MIT physicists observe key evidence of unconventional superconductivity in magic-angle graphene
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