2025年7月初旬、テキサス州中央部を襲った鉄砲水の後、ボランティアがビッグサンディクリーク沿いで約1億1500万年前の恐竜の足跡を発見しました。この発見は、自然の力がいかにして過去の秘密を明らかにするかを示す驚くべき一例です。
発見された足跡は、長さ約45～50センチメートルで、肉食恐竜アクロカントサウルスに似ていると古生物学者は特定しています。アクロカントサウルスは、体長約10～12メートルに達した白亜紀前期の大型肉食恐竜で、「テキサスのT-レックス」とも呼ばれます。また、近くで見つかった他の足跡は、テキサス州の州恐竜である大型草食恐竜パルキシサウルスのものである可能性も示唆されています。これらの足跡は、当時のテキサスが多様な恐竜たちが共存する活気あふれる環境であったことを物語っています。
テキサス大学オースティンの古生物学者マシュー・ブラウン氏によると、このような足跡は予期せぬ場所で見つかることも珍しくなく、今回の発見は、通常は水や土砂に覆われている場所が、洪水の力によって地表に現れたものです。足跡は、当時の地面が恐竜の体重によってどのように変形したかを示す「トレース化石」の一種であり、恐竜の歩行速度、歩幅、群れで行動していたか、あるいは捕食者と被食者の関係性といった、当時の生態や行動様式に関する貴重な手がかりを与えてくれます。
これらの足跡は私有地にあり、土地所有者の意向により一般公開はされていませんが、科学者たちは今後、これらの貴重な痕跡を地図化し、3Dスキャンを行うことで、さらに詳細な研究を進める予定です。この発見は、自然災害という困難な状況下でも、生命の営みが時を超えて私たちに語りかけるメッセージを受け取る機会を与えてくれます。それは、過去の生命が大地に刻んだ足跡を通じて、現在の私たちに、生命の連続性と地球の壮大な歴史への深い洞察をもたらしてくれます。