ニューヨーク州の裁判官は、レックス・ヒューエルマン被告が関与したとされるギルゴビーチ連続殺人事件の裁判において、最新のDNA鑑定結果を証拠として採用することを認めました。この決定は、ホールゲノムシーケンシングと呼ばれる高度なDNA解析技術が、ニューヨーク州の刑事裁判で証拠として使用される初のケースとなり、法医学の分野における重要な進歩を示しています。
61歳の建築家であるヒューエルマン被告は、1993年から2010年にかけてギルゴビーチ周辺で発見された7人の女性、メリッサ・バーテレミー、ミーガン・ウォーターマン、アンバー・コステロ、モーリーン・ブライナー・バーンズ、ジェシカ・テイラー、サンドラ・コスティラ、ヴァレリー・マックの殺害容疑で起訴されています。
検察側の主張の根幹をなすのは、カリフォルニア州の研究所アストレア・フォレンジック社が実施したDNA鑑定です。同社は、劣化の激しいサンプルからホールゲノムシーケンシングを用いてDNAを解析する専門家であり、10万箇所以上を比較することで、ほぼ確実な身元特定を目指しています。この技術は、特に毛髪のようなサンプルからDNAを抽出・解析できる能力を持ち、従来の方法では困難であった証拠を、被告との関連性を証明する強力なものに変える可能性があります。実際に、モーリーン・ブライナー・バーンズさんの遺体と共に発見された一本の毛髪は、この技術によってヒューエルマン被告の妻に結びつけられました。
弁護側は、この証拠の採用に異議を唱え、ニューヨーク州の刑事裁判で正式に検証・採用されたことがないこと、また、営利目的の研究所が刑事事件の証拠を提出する際のニューヨーク州公衆衛生法に違反する可能性があると主張しました。しかし、ティモシー・マゼイ判事は、弁護側が検察側の科学的証拠の反証に失敗したと判断し、アストレア・フォレンジック社のDNA鑑定結果をヒューエルマン被告の裁判で使用することを認めました。
この決定は、法医学分野における新たな時代の幕開けを示唆しており、今後同様の先進技術が多くの刑事事件で活用される可能性を示しています。サフォーク郡地方検事レイ・ティエルニー氏は、この決定を法医学の歴史的な一歩として称賛しています。裁判の日程はまだ確定していませんが、このDNA鑑定結果が裁判の行方に大きな影響を与えることは間違いありません。ヒューエルマン被告は一貫して無実を主張しています。