NASAの火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)は、2025年10月に太陽系を通過する中間圏彗星3I/ATLASの観測を行う予定です。この彗星は、2025年7月1日にATLAS望遠鏡システムによって発見され、1977年の「オウムアムア」と2019年の「ボリソフ彗星」に続く、太陽系を通過する3番目に確認された中間圏天体です。
ハッブル宇宙望遠鏡による7月21日の観測では、彗星特有の尾は確認されませんでしたが、ガスと塵からなるコマが観測されました。また、太陽から3.51天文単位(AU)の距離で、毎秒40キログラムの水が生成されていることが検出されています。彗星の核の直径は、320メートルから5.6キロメートルと推定されています。
MROは、その高性能なHiRISEカメラを使用し、彗星の核やコマの微細な構造を捉えることが期待されています。HiRISEは火星の地表を約30センチメートルの解像度で撮影できる能力を持っています。MROは2006年から火星を周回しており、そのHiRISEカメラは高解像度の画像を提供してきました。
さらに、連邦議会議員のアンナ・ポーリーナ・ルナ氏は、天体物理学者のアビ・ローブ氏が提案した、木星探査機ジュノーを利用して2026年3月に3I/ATLASを捕捉・観測するという計画を支持しています。MROとジュノーからの共同観測は、中間圏天体の組成や挙動に関する貴重な情報を提供し、太陽系外からの訪問者への理解を深めることに貢献すると期待されています。
3I/ATLASは、太陽系を通過する他の天体とは異なり、非常に速い速度で移動しており、その軌道は双曲線を描いています。これは、太陽の重力に束縛されず、太陽系を通過した後、再び戻ってくることはないことを示唆しています。この彗星は、約70億年以上前の古い星から放出された可能性があり、太陽系内の彗星とは異なる組成を持っているかもしれません。
彗星は2025年10月3日に太陽に最も近づき、火星から約2896万キロメートルの距離を通過します。この接近は、地球からの観測が太陽との位置関係で困難になるため、火星軌道上からの詳細な観測にとって貴重な機会となります。