世界中の農業生産は、予測不能な気候変動により、かつてないほどの課題に直面しています。近年、激しい雨と極端な暑さが交互に訪れるなど、不安定な気象条件が作物の生育サイクルを混乱させ、収穫量の減少や品質の低下を招いています。
農作物への影響は多岐にわたります。長期間の雨は根腐れを引き起こし、続く猛暑は葉を乾燥させ、作物を傷めます。2023年の日本では、記録的な猛暑により、米の品質低下(白未熟粒の発生)や、果実の着色不良、日焼けといった被害が報告されました。農林水産省のレポートによると、2023年産米では高温により白未熟粒が全国で5割程度発生し、1等米比率は過去最低水準となりました。また、2024年夏には、キャベツの不作により価格が例年の3倍以上に高騰する事態も発生しました。世界的に見ても、2023年7月は観測史上最も暑い月となり、世界平均気温は16.95℃に達しました。このような異常気象は、農作物の収穫量を減少させるだけでなく、病害虫の発生増加や分布域の拡大にもつながり、農業生産にさらなるリスクをもたらしています。
生産量の減少は、市場価格に直接的な影響を与えます。農家は、生産コストの増加と収穫量の減少という二重の苦境に立たされ、その結果、消費者はより高い価格で農産物を購入せざるを得なくなっています。例えば、2024年4月には、コートジボワールとガーナでの熱波により、世界のココア価格が280%も急騰しました。コーヒー市場も同様に、ブラジルでの干ばつにより価格が55%上昇し、ベトナムでの高温によりロブスタコーヒー価格が100%上昇するなど、混乱が生じています。
このような状況は、農業コミュニティに大きな経済的負担を強いています。長期的な視点で見ると、気候変動の激化に対応するための適応戦略の必要性が高まっています。これには、気候変動に強い品種の開発や、栽培技術の改良、そして持続可能な農業の実践が含まれます。世界的な食料安全保障を維持するためには、これらの課題への取り組みが不可欠です。