シリア北西部、ラタキア県とハマ県では、水曜日から始まった大規模な山火事が猛威を振るい、市民防衛隊と地域ボランティアが消火活動に奔走しています。火災はハマ県のガブ平原からラタキア県のジャブレ地域へと広がり、特にラタキア北部のカサブ地域やジャバル・アル・アクラド山脈の森林など、広範囲にわたって森林や農地を焼き尽くしています。
この火災は、地域の貴重な植生に深刻な被害を与え、すでに厳しい干ばつ状況を悪化させています。これまでに28カ所で1万ヘクタール以上の森林および農地が焼失し、アナブ、アブ・クリフーン、マルダシュといった村々では家屋や果樹園にも被害が及んでいます。1,120人以上が避難を余儀なくされ、約5,000人、特に子供や高齢者といった脆弱な立場にある人々が呼吸器系の不調を訴えるなど、人々の健康にも影響が出ています。シリア沿岸部の気温は過去数年間で約1.5度上昇しており、緑地面積も過去10年間で約30%減少しているという報告もあります。このような気候変動による影響は、乾燥した植生と相まって、火災の急速な拡大を招く主要因となっています。さらに、火災活動の増加は、紛争の長期化、経済的不安、そして土地利用のあり方といった要因が複雑に絡み合った結果とも言えます。長年の不安定な状況下では、地元住民が農業の拡大や木材取引のために自然植生を利用せざるを得ない状況も生じ、これが火災のリスクを高める一因となっています。また、消火活動においては、紛争の遺した不発弾が新たな危険要因となることも指摘されており、消防隊員の安全確保も喫緊の課題です。
市民防衛隊は、50の自治体消防隊と20の森林消防隊を含む70以上のチームを投入し、軍のヘリコプターや重機、そして地域住民の協力を得ながら消火活動を進めています。しかし、険しい山岳地帯、狭いアクセス路、そして時折吹く強風が、鎮火作業の大きな障害となっています。ラタキア県とハマ県では、火災現場へのアクセスが困難な場所が多く、特に山岳地帯では不発弾の存在が作業をさらに複雑にしています。北東シリアからの消防チームの支援も行われていますが、その努力は続いています。
この困難な状況下でも、地域住民が自らの手で消火に協力する姿や、支援のために駆けつけた人々との連帯が見られます。こうした経験は、自然災害への対応能力を高め、地域社会の回復力を育む機会ともなり得ます。火災の被害は甚大であり、生態系への長期的な影響も懸念されますが、この危機を乗り越える過程で培われる協力と適応の精神は、将来への希望の光となるでしょう。