1977年に観測された「ウォウ!」信号について、近年の研究がその起源を地球外生命体ではなく、宇宙の自然現象にある可能性を強く示唆しています。この信号は、いて座の方向から72秒間観測され、その異常な性質から「Wow!」と名付けられました。人工的な信号であるとの憶測を呼んだのは、水素が発する周波数帯に近く、かつ狭帯域であったためです。ピーク時のフラックス密度は250ジャンスキーを超えると測定されましたが、一度しか検出されず、長らく謎に包まれていました。
アベル・メンデス氏(プエルトリコ大学)らが主導する研究チームは、2017年から2020年にかけてアレシボ天文台のアーカイブデータを用いて、「ウォウ!」信号に似た、より弱いながらも狭帯域の信号が冷たい水素雲から放出されていることを確認しました。2025年8月に発表された論文「アレシボ・ウォウ!II:アーカイブされたオハイオSETIデータからの「ウォウ!」信号の改訂された特性」では、最新の解析手法により、信号の発生源が赤経19時25分02秒±3秒または19時27分55秒±3秒、赤緯-26度57分±20分(J2000)の2つの領域に絞り込まれました。この精密なデータは、信号が天体物理学的な起源を持つという仮説を強く支持しています。メンデス氏らの仮説では、この信号はマグネターからのフレアのような一時的な強力な放射源によって励起された冷たい水素雲が、アストロフィジカルメーザーを発した稀な現象である可能性が指摘されています。