自律型水中ロボット「Hydrus X」:南極の心臓部を覗く

編集者: Inna Horoshkina One

地球の果て、氷が静寂な深海と交わる場所で、自律型水中探査機「Hydrus X」を投入した科学調査隊が、南極大陸棚の海底について、これまでで最も詳細な地図を作成するミッションを完了しました。

この探査は、スクリップス海洋研究所(Scripps Institution of Oceanography)の専門家によって実施され、地球の深部がいかに活動し、呼吸しているかを理解するための新たな道を開く技術的な躍進となりました。

「Hydrus X」は、最新鋭の自律型水中ビークル(AUV)であり、高密度の海底堆積物を透過できる強化されたソナー複合体を搭載しています。この革新的な技術により、科学者たちは初めて、海底の内部構造をセンチメートル単位の解像度でマッピングする能力を獲得しました。

これは、従来の衛星システムを用いても達成不可能だった精度です。この技術は、単に地形を見るだけでなく、気候、氷の動き、そして生命の歴史が刻まれた層、すなわち「海の記憶」を読み解くことを可能にします。

探査機の展開は、地球上で最も孤立し、アクセスが困難な地域の一つであるアムンゼン海の海域で、2024年末に行われました。ミッションの過程で、これまで知られていなかった熱水噴出域、複雑な地質構造、そして地殻変動プロセスと生物活動との相互作用の痕跡が特定されました。

これらの海底地形が、深海海流のダイナミクスにおいて極めて重要な役割を果たしており、ひいては地球全体の気候メカニズムに影響を与えていることが判明しました。

今回得られた水深測量データは、世界の気候モデルを精緻化するための新たな基礎を提供しています。研究者たちは、海底構造を正確に記述することが、気候変動の予測、特に海氷や棚氷に関連するプロセスに関する予測の信頼性に直結すると強調しています。

モデルが「海底を感じる」ことができるようになれば、深層における熱と物質の輸送をより正確に計算できるようになります。これは、海洋が地球全体の温度、海面水位、そして氷床の将来にどのように影響を与えるかをより深く理解することに繋がるのです。

ミッション参加者たちは、「正確な海底の全体像がなければ、私たちは海の歴史の半分しか見ていないことになる」と指摘しています。

スクリップス海洋研究所による今回の遠征は、天候条件が航海を許す12月から2月にかけて実施される南極での定期的な野外プログラムの一環です。しかし、過去の多くのミッションとは異なり、「Hydrus X」は氷床そのものではなく、その下に横たわる深部構造に焦点を当てました。

この新しいレベルのディテールは、海底火山から、海の呼吸を司る海流の循環に至るまで、惑星環境を形成する相互関係を認識する上で役立ちます。

新しい地図の1メートルごとに、地球を一つの生きた有機体としてより深く理解するための歩みが刻まれています。

ソース元

  • livescience.com

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