イタリアのTerna社とフランスのNexans社は、シチリア島、サルデーニャ島、そしてイタリア本土の3地域を結ぶティレニア・リンクの西部区間の海底ケーブル敷設を開始しました。このプロジェクトは、海面下2,150メートルという、高電圧直流(HVDC)海底ケーブルとしては世界で最も深い水深に達する記録を樹立する見込みです。この記録的な深さでの敷設は、水中で鋼鉄より50%軽量な革新的な装甲と、先進的なケーブル敷設船レオナルド・ダ・ヴィンチ号の使用によって可能となりました。
ティレニア・リンクは、全長約970キロメートルのHVDC海底ケーブル2本で構成され、各ケーブルは1,000メガワットの電力伝送能力を持ちます。今回敷設が開始された西部区間は約480キロメートルに及び、敷設作業は2025年9月と12月に完了する2つのフェーズに分かれています。この戦略的なインフラプロジェクトには、総額約37億ユーロが投資されており、欧州連合(EU)のREPowerEUプログラムの一環として5億ユーロの資金援助を受けています。
Terna社のCEOであるジュゼッピーナ・ディ・フォッジャ氏は、ティレニア・リンクがエネルギー移行における重要なインフラであると強調しました。Nexans社のエグゼクティブ・バイスプレジデントであるパスカル・ラデュエ氏は、このプロジェクトがイタリアのエネルギーの未来に長期的な影響を与えることを指摘しました。このインフラは、イタリア国内および欧州全体の電力網の安定性と柔軟性を高めることに貢献します。
海底ケーブルの敷設は、海洋環境への影響を最小限に抑えるための革新的な手法が用いられています。特に、絶滅の危機にある海草「Posidonia oceanica」の保護に配慮した工法が採用されており、持続可能なエネルギー開発と健全な海洋環境との共存を目指す取り組みの一環です。プロジェクトは2028年の完了を目指しています。