オーストラリア、クイーンズランド州の沖合で、ザトウクジラの親子がサメ除けネットに絡まるという出来事がありました。ドローン映像によって、まず母クジラが網に絡まり、その結果として子クジラも巻き込まれてしまった状況が捉えられました。
海洋哺乳類研究者のオラフ・メイネッケ博士によると、このような絡まり事故は毎年発生していますが、今回は4頭のクジラが同時に網にかかるという前例のない事態でした。特に、母親と子どもの組み合わせで発生することが多く、子クジラの脆弱性と溺死のリスクが強調されています。
この事件は、サメ除けネットが海洋生物、特に回遊時期のクジラに与える影響についての議論を再燃させています。環境保護活動家たちは、クジラの回遊が活発な時期には、これらのネットを一時的に撤去するよう求めています。これは、同様の悲劇を未然に防ぎ、海洋生態系の健全性を維持するための重要な一歩となります。ニューサウスウェールズ州ではクジラの回遊中にサメ除けネットが撤去されるのに対し、クイーンズランド州ではネットが一年中設置されたままであり、海洋動物に甚大な被害をもたらしています。調査によると、2001年以降、オーストラリア東海岸沖で約81頭のクジラがサメ除けネットに絡まっており、大型の個体がこのような罠で生き残ることは稀です。
船舶との衝突も、クジラやサメを含む海洋動物の死亡の主な原因の一つです。地球温暖化と気候変動もサメの回遊経路に影響を与え、網に絡まるリスクを高めています。また、海洋汚染、特にマイクロプラスチックは、ザトウクジラなどの海洋哺乳類の健康に対する隠れた脅威であることが研究で示されています。この事件は、私たち人間が自然界とどのように共存していくべきかという、より大きな問いを投げかけています。海洋生物の安全を守るための規制や技術の改善はもちろんのこと、私たち一人ひとりが海洋環境への意識を高め、持続可能な未来を築くための行動を選択していくことが求められています。それは、地球という一つの生命体の中で、全ての存在が調和して生きる道を探求することに繋がるでしょう。