ウェールズのスノードニア国立公園、クム・イダルにて、希少なホーリー・ファーン(Polystichum lonchitis)が150年以上ぶりに確認され、その存在が再び明らかになりました。この発見は、植物の驚くべき生命力と、身近な風景に潜む未解明の神秘性を浮き彫りにしています。
ホーリー・ファーンは、光沢のあるヒイラギのような葉を持ち、厳しい高地環境を好みます。ウェールズやイングランドでの希少性は、ヴィクトリア朝時代の「シダ熱」による過剰な採集が一因とされています。今回発見された若い個体は、新たな定着の可能性を示唆しています。
英国植物学会(BSBI)のウェールズ担当官であるアラステア・ホッチキス氏は、「これは驚くべき再発見です。私たちの高山植物について、まだどれほど多くのことを学んでいないか、そしてどれほど多くを守るべきものがあるかを力強く思い出させてくれます」と述べています。
クム・イダルは、ユニークな寒帯・高山植物と地質学的特徴で名高い氷河期の圏谷(カール)です。この地域は、スノードン・リリーやスノードニア・ホークウィードといった希少種にとっての聖域となっています。1954年にウェールズ初の国立自然保護区に指定されたこの場所は、4億5千万年前のオルドビス紀に形成された堆積岩や火山岩が氷河の浸食作用によって現在の特徴的な景観を作り出しました。チャールズ・ダーウィンも1831年にこの地を訪れ、地質学的調査を行っています。
この再発見は、BSBIの会員であり、経験豊富な登山家で自然保護活動家でもあるジム・ラングレー氏によって行われました。この発見は、鋭い観察眼の重要性と、熟練した博物学者が植物科学に貢献する価値を改めて示しています。
ホッチキス氏は、「この植物を再び失わないように監視する機会を得ました」と付け加え、スノードニアにおける継続的な保護と監視活動の必要性を強調しています。このホーリー・ファーンの再発見は、クム・イダルの植物学的遺産に新たな息吹を吹き込むだけでなく、自然界の回復力と、探求心が未だ見ぬ発見へと導く可能性を示唆しています。