ナスカ地上絵直下の地下構造物、古代文明の新たな層を提示か

2025年初頭、国際的な考古学チームは、ペルーのナスカ地上絵の真下に広がる、未確認の広大な地下都市の存在を確認したと発表した。この発見は、同地域の古代文明に関する従来の理解を再考させる可能性を秘めている。

この地下複合施設は、地上の地上絵が描かれた時代よりも古い可能性があり、ナスカ地域において、従来推定されていたよりも数世紀早く高度な文明が地下で活動していたことを示唆している。初期の探査は、ペルー文化省とケンブリッジ大学の研究者が共同で実施し、先進的な地中レーダー（GPR）技術が用いられた。推定される構造物は数平方キロメートルに及び、複雑なトンネル網、大規模なチャンバー、そして儀式的な広場と見られる空間で構成されている。

文化省の主任考古学者であるエレナ・バルガス博士は、建築様式に初期のパラカス文化との類似性が見られるものの、この地域の遺跡としては前例のない規模であると指摘している。パラカス文化はナスカ文化の先駆的文化であり、紀元前800年頃から紀元前100年頃まで栄えたとされる。今回の地下都市の建築様式が初期パラカス文化に類似しているという事実は、この地下文明が、ナスカの地における人類定住の初期段階、あるいはそれ以前の重要な儀礼的・居住的中心地であった可能性を示唆する。

地下のアクセス可能な最上層からは、既知のナスカやパラカス様式の遺物とは異なる図像を持つ、保存状態の良い陶器群が発見された。これらの遺物は、ナスカ文化の美術様式が土器に重点を移す以前の、パラカス文化との連続性や差異を考察する上で重要な手がかりとなる。ナスカの地上絵とパルパの地上絵は世界文化遺産に登録されているが、今回の発見は、この地域の歴史的層積をさらに深く掘り下げるものとなる。

この巨大な地下集落の正確な機能は、依然として考古学界で議論の的となっている。構造的な完全性の評価と専門的な保存プロトコルの策定が完了するまで、より深い層への立ち入りは一時的に制限されている。この慎重なアプローチは、貴重な遺産の保護を目的としており、ペルー国立考古・人類・歴史学博物館が所蔵品の研究・展示機材の整備を日本からの無償協力で進めてきた背景とも相まって、国際的な協力体制の重要性が強調される。

なお、山形大学ナスカ研究所はAIを活用した解析手法を導入し、2025年7月に新たに248点の地上絵が発見されたと発表しているが、今回の地下都市の発見はそれらとは異なる次元の学術的意義を持つ。今後の詳細な調査により、この隠された都市がアンデス文明の系譜において占める位置が明らかになることが期待される。