国際研究チームは2025年、南極大陸棚下に300を超える氷底渓谷を発見したと発表した。これは従来の推定の5倍にあたり、気候力学への理解を大きく変える可能性がある。一部の渓谷は深さ4,000メートルを超え、その広大なネットワークが明らかになった。
東南極の渓谷群は複雑に分岐し、U字型の断面を持つ一方、西南極の渓谷は短く急峻でV字型をしており、それぞれ長期間の氷河活動や最近の氷床融解のプロセスを示唆している。これらの地形的差異は、南極の多様な氷河史と現在のダイナミクスを理解する上で貴重な手がかりとなる。
これらの氷底渓谷は、外洋から暖かく塩分の濃い海水を氷床基部へ運び込む「水路」として機能し、氷棚の融解を加速させている。この融解による淡水は、地球全体の熱や栄養塩の分配、気候安定に不可欠な南極周回海流（ACC）の減速につながる可能性が指摘されている。ACCの流れの変化は、地球の熱や炭素吸収能力にも影響を及ぼし、広範な気候変動を引き起こす懸念がある。
この発見は、高解像度の海底地形データを用いた詳細なマッピング技術によって可能となった。未踏地域における継続的な探査とデータ収集の重要性が改めて浮き彫りになっており、今後のさらなる発見が期待される。これらの新たな知見は、氷と海の複雑な相互作用を解明し、将来の気候変動予測の精度を高めるために不可欠である。