ドイツの北海に浮かぶヘルゴラント島沖の海底で、海洋考古学者たちが16門のイギリス製大砲を発見した。これらの砲は、ヘルゴラント島がナポレオン戦争中にイギリスの拠点であった約1800年頃のものとみられ、12ポンド砲やカロネード砲が含まれている。水中考古学者でプロジェクトリーダーのフロリアン・フーバー氏によると、これらの砲は「ブロムフィールド・リング」と呼ばれる丸みを帯びた尾栓部などの特徴的なデザインからイギリス製と識別できる。今回の発見は、1990年代の以前の回収作業を補完するもので、島がかつてイギリスの軍事的前哨基地であったことの重要性を改めて裏付けている。
この発見は、キールを拠点とする調査ダイビング会社「Submaris」がキール大学の支援を受けて実施した体系的な調査中に成し遂げられた。高解像度のソナーマッピングと3Dモデリング技術を活用し、研究者たちはこれらの遺物を正確に測定・記録した。研究者たちは、これらの砲が1890年にヘルゴラント島がドイツ帝国に引き渡される前に、イギリス海軍によって意図的に海中に投棄されたのではないかと推測している。当時、これらの砲はすでに技術的に旧式化していたと考えられている。ブロムフィールド砲は18世紀後半にトーマス・ブロムフィールドによって設計され、当時のイギリス軍砲兵の標準装備として広く使用された。これらの砲は、より強固な尾栓部と反動を制御するための尾栓環が特徴で、重量を増やさずに強度を高める工夫が凝らされていた。ナポレオン戦争中の水陸両方の戦いで重要な役割を果たし、ウォータールーの戦いでも使用されたことが記録されている。これらの砲にはスコットランドのカーロン鉄工所で鋳造されたものも含まれており、当時のイギリスの工業力と軍事技術の一端を示している。
ヘルゴラント島はナポレオン戦争中の1807年にイギリスによって占領され、1814年のキール条約で正式にイギリス領となった。この島は、ナポレオンの「大陸封鎖令」に対抗するためのイギリスの戦略的拠点として機能し、密輸業者や封鎖突破船の活動拠点となった。その後、1890年にドイツに引き渡されたが、今回の発見は、この島が持つ豊かな海事史、特にナポレオン戦争期におけるイギリス海軍の活動との関連性をさらに深く理解する手がかりとなる。過去の発見と合わせ、ヘルゴラント島がイギリスの軍事史において果たした役割の大きさを物語っている。