地球の北磁極がカナダからシベリア方面へと急速に移動しており、その動きは近年加速傾向にあります。この現象は、地球内部の液体の外核における溶けた鉄とニッケルの流れの変化に起因すると考えられており、地球の磁場を生成するジオダイナモに影響を与えています。
1990年代以降、北磁極の移動速度は顕著に増加し、年間10～15kmから一時は55kmにまで達しました。近年では約25km/年に落ち着いていますが、依然として活発な動きを示しています。この磁極の移動は、GPSをはじめとする様々なナビゲーションシステムに不可欠な「世界磁気モデル（WMM）」の精度に影響を及ぼします。最新のWMMHR2025モデルは2024年12月にリリースされ、2029年末まで有効ですが、磁極の予測不能な動きに対応するため、定期的な更新が求められています。
この磁場の変動は、航空、海上、陸上輸送はもちろん、軍事作戦や科学研究においても、正確な位置情報が不可欠であるため、ナビゲーションシステムの精度維持に重要な課題を投げかけています。地図やナビゲーションシステムのソフトウェアを常に最新の状態に保つことが、安全で正確な航行を確保するために極めて重要です。
さらに、地球の磁場は太陽風などの有害な宇宙線から私たちを守るバリアの役割も果たしています。磁場の変動は、衛星の軌道や通信システムにも影響を与える可能性が指摘されており、宇宙天気予報の精度向上や衛星システムの保護といった観点からも、この現象への理解と対応が求められています。過去には、地磁気の逆転現象も地球の歴史の中で数回発生しており、磁場の強度が低下する時期もあったことが示唆されています。これらの自然現象への継続的な観測と研究は、地球のダイナミズムを理解する上で不可欠です。