オーストラリア国立科学機関であるCSIROは、キャンベラに9000万ドルを投じて建設された最新鋭の施設「ダイバーシティ」を開設しました。この施設は、1300万点を超えるかけがえのない生物多様性標本を長期にわたり保存し、将来の科学的発見を支援することを目的としています。
「ダイバーシティ」施設には、オーストラリア国立野生生物コレクションとオーストラリア国立昆虫コレクションが統合されており、鳥類標本、ラン、鳥類の卵、組織サンプル、昆虫など、オーストラリアの自然遺産の重要な一部を網羅しています。これらのコレクションは150年以上にわたって収集されてきたものです。
CSIROの最高経営責任者であるダグ・ヒルトン博士は、この施設が環境モニタリング、病害虫管理、疾病予防、持続可能な資源管理のための研究を支援する上で極めて重要な役割を果たすと強調しました。これらのコレクションは、オーストラリアの科学、政策、農業、生物多様性保全の基盤として長年貢献してきました。
「ダイバーシティ」施設は、温度管理され、森林火災や害虫にも強い保管庫を備え、繊細な標本の長期保存を保証します。一般公開はされていませんが、世界中の研究者や市民科学者がアクセス可能であり、先進的な研究室ではデータの抽出と共有が容易に行えます。
CSIROオーストラリア国立野生生物コレクションのディレクターであるクレア・ホリー博士は、この施設を「オーストラリアの生物多様性のためのタイムマシン」と表現しました。これにより、標本の経時的なスナップショットを提供し、科学者がオーストラリアの動植物の変化を理解し予測することを可能にします。
この施設は、CSIROと教育省が国立共同研究インフラ戦略(NCRIS)を通じて共同出資したもので、建設は2022年の秋に始まり、2年強で完了しました。1300万点の標本の移転には約1年を要しました。この施設は、オーストラリアの科学的探求の新たな時代を切り開き、過去の知見を未来の課題解決に活かすための重要な基盤となります。